【10月10日 AFP】1つ1つのヒトの細胞は、膨大なDNAをいかにして詰め込んでいるのか――。その謎を解くべくヒトゲノムの立体構造を明らかにしたとする米科学者チームの論文が、8日の米科学誌「サイエンス(Science)」に発表された。

 論文を共同執筆した米マサチューセッツ大学医学部(University of Massachusetts Medical School)のNynke van Berkum研究員によると、「Hi-C」という新しい技術を用いてゲノムを数百万個の断片に切り分け、それぞれのパーツが互いにどの程度近いのかを示す空間地図を作成した。次にコンピューターを用いて、ジグソーパズルを埋めるようにヒトゲノムの3D構造を解明していったという。

 もう1人の主要執筆者である米ハーバード大学(Harvard University)のErez Lieberman-Aiden研究員によると、DNAは二重らせん構造だが、1つの細胞内のゲノムはまっすぐのばすと2メートルにも及ぶという。「二重らせん構造が直径100分の1ミリ程度の細胞核にどのように収まっているのかはまだわかっていない。今回のアプローチはその謎に切り込むものだ」(Lieberman-Aiden研究員)

 研究では、ヒトゲノムが2つの異なるコンパートメントで組織されていることがわかった。これにより、活性化した遺伝子が常にたんぱく質を働かせることができるとともに、不活性なDNAの密度が高い部分とは切り離されていることが可能になるという。

 研究では、ゲノムが「フラクタル」という数学用語で知られる方法で自己を組織していることもわかった。このため細胞はその核に、コンピューターチップよりも3兆倍も高い密度でDNAを閉じ込めることができる。このとき、細胞のゲノム読み取り能力を損なう恐れのある「もつれ」や「からみ」ができないようにすると同時に、遺伝子活性化、遺伝子抑制、細胞複製の際にDNAが容易に折り畳まれたり引き伸ばされたりするのを可能にしていた。(c)AFP