【9月6日 AFP】ある遺伝子の働きを阻害することで高脂肪の食事をとるマウスも肥満にならないことを、米ミシガン大学(University of Michigan)の研究チームが突き止めた。4日発行の米科学誌セル(Cell)に掲載された。

 米ミシガン大学(University of Michigan)生命科学研究所(Life Science Institute)のアラン・サルティエル(Alan Saltiel)所長は、この遺伝子「IKKE」はマウスの肥満に関係があると説明。IKKEの働きを阻害した場合、高脂肪の食事を与えたマウスもやせた体型を維持したと述べた。

 今後の研究でIKKEとヒトの肥満との関連性が明らかになれば、肥満や糖尿病などの治療薬を開発する上で、IKKEとIKKEがつくるタンパク質に注目が集まるとみられる。

■代謝のブレーキ役

 研究では、マウスの一方のグループにはカロリーの45%を脂肪が占める餌を、もう一方のグループにはカロリーの4.5%を脂肪が占める通常の餌を与えた。実験には生後8週のマウスを用い、生後14~16週まで続けられた。

 IKKE遺伝子は、ほかのタンパク質の働きを「オン・オフする」作用を持った酵素であるタンパク質キナーゼをつくりだす。IKKEが作るタンパク質キナーゼは、ある特定のタンパク質を制御することで、結果的にマウスの新陳代謝を調節する遺伝子を制御するとみられる。

 通常のマウスに高脂肪の食事を与えると、IKKEが作るタンパク質キナーゼのレベルが上昇し、代謝速度が減速。その結果、マウスの体重が増加した。IKKEが作ったタンパク質キナーゼが、代謝のブレーキ役として作用したことになる。

 一方、IKKE遺伝子を取り除いたマウスでは、高脂肪の食事を与えても体重の増加が見られなかった。「おそらく、IKKE遺伝子を削除することで代謝のブレーキがかからなくなり、そのため、脂肪として蓄える代わりにカロリーの燃焼が続いた」という。

■今後はタンパク質キナーゼの阻害物質を特定へ

 研究チームは、IKKEが作るタンパク質キナーゼの活動を阻害する物質が見つかれば肥満治療薬の有力候補になると考え、現在この物質を探している。(c)AFP/Jean-Louis Santini