【7月10日 AFP】スペイン南部で体毛の濃いマンモスの化石が発見され、氷河期(Ice Age)最終期にはマンモスの生息に適する寒冷地がこれまで考えられていたよりもかなり南方まで拡大していたことが証明された。

 10日、発見を報告した考古学者らによると、スペイン南部グラナダ盆地(Granada Basin)にある街パドゥル(Padul)に近い泥炭湿原で、雄の成体のマンモス4頭の化石が発見された。放射性炭素年代測定によると、3万5000年前から2万5700年前の間に生息していたものとみられる。

 これまでも欧州でマンモスの化石が発見された最南限はスペインで、北緯40度前後と考えられていた。しかし、今回発見された位置はこれまでの最南端よりもさらに300キロ南方で、氷河期に最大となった乾燥した寒冷気候の草原は、今までの推測よりもさらに南方まで広がっていたことが示された。

 スペイン・オビエド大学(University of Oviedo)の研究者、ディエゴ・アルバレス・ラオ(Diego Alvarez-Lao)氏によると、「今回発見された体毛の濃いマンモスは、迷って偶然南を目指すことになった動物たちの一部ではなく、当時グラナダ周辺に定住していたものだ」という。掘削コア試料からも、スペイン一帯でステップ気候性の植物が繁栄した時期があることが裏付けられるという。

 マンモスがスペインに南下した時期は、中国東部や日本北部、カムチャッカ半島などに移動したのと同時期で、大西洋北東部や大西洋北西部の気候変動と関係があると研究チームでは推測している。

 今回の研究は、スペイン・マドリード大学(University of Madrid)とオランダ・ロッテルダム自然史博物館(Natural History Museum in Rotterdam)の研究者も加わり、報告は専門誌「Palaeogeography, Palaeoclimatology, Palaeoecology(古地理学、古気候学、古生態学)」に発表された。

 マンモスは氷河期の後、後期更新世(Late Pleistocene)と呼ばれる時期に入り絶え始め、約1万年前には絶滅した。絶滅の原因には諸説あり、自然な地球温暖化によってマンモスの食料がなくなったためとも、氷河期以降に急激に増加した人類によって全滅させられたともいわれている。(c)AFP