【5月20日 AFP】(一部更新)ノルウェーの科学者らは19日、ヒトや類人猿の共通の祖先のものと見られる小型の骨格化石を公開した。

 ニューヨーク(New York)のアメリカ自然史博物館(American Museum of Natural History)での記者会見で公開されたのは、4700万年前のものと見られる化石で、「アイダ(Ida)」(学名:Darwinius masillae)と名付けられた。保存状態は非常に良く、欠損しているのは片脚の一部、全骨格の5%にすぎない。

 キツネザルに似たこの化石は、始新世の化石が数多く出土することで知られるドイツのメッセル・ピット(Messel Pit)で発掘されたとみられているが、個人収集家らの手によって1983年に発見された。収集家は、この化石の重要性を知らずに2つに割ってしまっていた。

 化石は長い尻尾を持っているものの、対置できるようになっている親指や短い手足、前方に寄った目など、いくつかのヒトの特徴を持っている。一方で、細くとがった爪、目の細かいくしのような下の歯という2点は、現代のキツネザルにはない特徴だ。

 化石の研究グループを率いるノルウェーの化石専門家、Jorn Hurum教授はこの日、「これは、全人類に結びつく最初のリンクだ」とする声明を発表した。

■「アイダ」の最期は?

「アイダ」は、世界が現在の形をとり始めていた時代の手掛かりを与えてくれる。その時代とは、恐竜が絶滅し、ヒマラヤ山脈が形成され、幾多のほ乳類が巨大なジャングルで繁栄していたころのことだ。

 2年間にわたって行われてきた研究で、「アイダ」は片方の手首を骨折していたことがわかっている。専門家らによると、「アイダ」はメッセルの湖で水を飲もうとしていたとき、二酸化炭素のガスを吸い込んで気絶し、湖に落ちた。そして意識のないまま、湖の底へと沈んでいき、湖底の独特な土壌が「アイダ」の遺体を4700万年もの間保存してきたという。

 腸からは果物のかすや種子、葉が発見されており、草食動物であったことを物語っている。(c)AFP/Luis Torres de la Llosa