【2月6日 AFP】ほぼ北米にのみ生息する黒いオオカミは、飼い犬との交雑で黒色の体毛を遺伝した可能性が高いとの研究が5日、米科学誌「サイエンス(Science)」に発表された。

 米スタンフォード大学( Stanford University)とカナダのカルガリー大学(University of Calgary)の研究チームは、カナダの北極圏に生息する黒、灰色、白のオオカミ41匹と、米イエローストーン国立公園(Yellowstone National Park)に生息する黒と灰色のオオカミ224匹のDNAを採取し、飼い犬や黒と灰色のコヨーテと比較した。その結果、米先住民や欧州からの移民の飼い犬との交雑が、オオカミの遺伝的変異に影響を与えた可能性が高いことがわかったという。

 論文を共同執筆したMarco Musianiカルガリー大教授は、「偶然起きたことだが、黒いオオカミは、人間によって遺伝子操作された初のオオカミだ。イヌの家畜化が、濃い毛色のオオカミの出現につながった。北極圏のオオカミの生息域は縮小しており、この特色は生息数の面からも重要だ」と述べている。
 
 濃い体毛は、森の中でオオカミが獲物を追う際に姿を隠すのに有利で、森林地帯では黒いオオカミが約62%を占めているという。一方、薄い毛色のオオカミはツンドラ地帯に多く生息しており、黒いオオカミは約7%しかいない。

 論文によれば、多くのイヌの遺伝学者は、現在北米に生息するイヌはすべて欧州のイヌの血統を引いているとみているが、濃い毛色のオオカミは、1万-1万5000年前に人間がイヌを連れてベーリング海峡(Bering Strait)を越え、北米に移住した後に出現したという。(c)AFP