【1月31日 AFP】英国の専門家チームは、バッタが孤独相から群生相に相転換するのは、脳内の神経伝達物質セロトニンが原因であることを突き止めた。29日の米科学誌「サイエンス(Science)」で発表された。

 バッタの後ろ脚をくすぐると、2時間後、そのバッタは、作物を食い尽くす巨大な群れを構成する一員となる準備が整う。これは、脚をくすぐって刺激するのは、通常1匹で行動するバッタが、食糧不足のために集団にならざるを得ない状況でぶつかり合うのと同じ状況を作り出すことになるためだが、研究者らは群れを作る理由は分かってはいたものの、急激な生物学的変化が起こる仕組みについては  90年間  も頭を悩ませていた。

 研究論文の共同執筆者、ケンブリッジ大学(Cambridge University)のSwidbert Ott氏は、「セロトニンは脳内の化学物質で、人間の行動や他者とのかかわりに大きく影響を及ぼすものだが、これと同じ化学物質が、内気で孤独を好む昆虫を大集団に団結させるのを知るのは驚きだ」と語った。

 研究結果によると、セロトニンが、個々のバッタを敵対関係から引きつけ合うように変えるという。また、群生相のバッタのセロトニン水準は孤独相のバッタより3倍高いことも判明した。

 いったん群生相に相転換すると、緑色だったバッタは鮮やかな黄色に変わり、筋肉も増強して長時間の飛行や仲間の活動的な捜索が可能となる。数十億匹規模の大集団となって、餌を探して約100キロメートルの距離を5-8時間飛ぶこともできるという。

 だが、孤独相のバッタにセロトニンの生成を抑制する物質を注入すると、そのバッタは落ち着いたままで、後ろ脚を刺激したり群れが現れても群生相には転換しなかった。一方、セロトニンの分泌を刺激する物質を注入されたバッタは、きっかけとなる刺激がなくても群生相へと変形したという。

 もう1人の共同執筆者のオクスフォード大学(University of Oxford)のMichael Anstey氏は、「これまで、刺激を与えるとバッタが『ジキルとハイド』のような驚くべき変形を引き起こすことは分かっていたが、孤独相のバッタを巨大な群れへと変える神経系の変化を特定することはできずにいた」と述べた。(c)AFP