【12月22日 AFP】育児や高齢者介護の分野などでロボット技術が飛躍的に進歩するなか、ロボットに関する倫理ガイドラインの早期策定が必要だと、英科学者が18日発売の米科学誌「サイエンス(Science)」のなかで警鐘を鳴らしている。

 人工知能ロボット工学を専門とするノエル・シャーキー(Noel Sharkey)英シェフィールド大学(University of Sheffield)教授は、日常生活のなかでロボット技術に接する頻度は確実に増しており、これに伴い予期せぬリスクや倫理問題が発生するおそれがあると警告。日本や韓国では少なくとも14社が育児用ロボットを開発している事実をあげ、育児用ロボットが育児放棄や社会不適合といった問題を生み出す可能性を指摘した。

 シャーキー教授によると、短時間の接触ならば、ロボットは子どもの好奇心を刺激し楽しい経験をもたらす。だが、長時間にわたるロボットによる育児が、子どもたちの精神面にどのような影響を及ぼすかについては、現時点では不明なままだ。

 サルで行った実験では、幼児期にロボットに育てられたサルは仲間との交流ができず、繁殖行為も行えなかったという。
 
「ロボットの日常生活への進出はこれまでに類をみない速度で進んでいる。にも関わらず、国際的な倫理基準は存在せず、このままでは、軍事機関やロボット業界、育児に手が回らない多忙な両親らの思うままにロボットが発展してしまう」とシャーキー教授は懸念を示す。

 そのため教授は、ロボットが一般に大量普及するまで待たずに、即時に国際レベルで共通の倫理ガイドライン策定に着手することが必要だと説く。

 一方、意志や感情を持ったロボットが人間社会を脅かすといったSF小説や映画的な見方には、シャーキー教授は懐疑的だ。

 教授にとって、ロボットは「コンピューターやセンサーによって動く単純な機械」で、SF小説で描かれるように自ら考えることなどはありえない。「わたしが懸念するのは、ロボット自体ではない。人間がロボットをどう活用するかなのだ」とシャーキー教授は強調した。(c)AFP/Edouard Guihaire