【12月8日 AFP】海洋動物プランクトンの幼虫の視覚システムは、色素細胞と感光性細胞のたった2個の細胞からなり、生物の視覚システムの中で最も簡易なものと考えられているが、この仕組みについて欧州の生物学チームが解明した。

 海洋動物プランクトンは、カイアシやオキアミといった微小生物で、潮の流れに乗って海中を漂っているが、海面近くの植物性プランクトンを食べるために、光を目指して深海から浮上してくる。この習性は走光性と呼ばれる。

 欧州分子生物学研究所(European Molecular Biology LaboratoryEMBL)と独マックスプランク研究所(Max Planck Institute)の合同チームはツルヒゲゴカイの幼虫に着目し、プランクトンの走光性について解明を試みた。

 ツルヒゲゴカイの幼虫の眼細胞は、色素細胞と感光性細胞の1つずつのみで、世界で最も簡易な視覚システムと考えられている。この眼細胞でイメージをとらえることは不可能だが、光と闇を区別することができ、適切な信号を送って泳ぎをつかさどる。

 その仕組みは、まず色素細胞が光を吸収し、光受容細胞に暗影を投じる。影の形は、光源の位置によって変わってくる。その後、光受容細胞がこの光の信号を電気に変え、神経を通じて、細胞小器官である繊毛にその電気信号を送り、繊毛が水中を移動する推進力を生み出している。

 この必要最小限かつ効果的な視覚システムは、生物の進化における最も初期の目の仕組みの解明につながる可能性もある。

 報告は11月19日の英科学誌「ネイチャー(Nature)」で発表された。(c)AFP