【11月10日 AFP】米国と欧州が今後30年間で達成する予定の有人火星探査計画で、障害の1つとなっているのが宇宙飛行士が浴びる宇宙放射線の問題だが、このたび英国とポルトガルの研究チームが、この宇宙放射線を防ぐ磁場シールドを作り出す技術の開発に成功したという。英物理学研究所が前週発行した専門誌で発表された。

 火星と地球の往復には最短距離でも往復に最低18か月はかかり、宇宙船の乗組員はこの間、宇宙空間を飛び交う放射線の粒子にさらされることになる。この放射線はDNAを貫き、がんなどの疾患を引き起こす危険がある。このことは約半世紀前から認識されてきた問題だが、コストと技術的問題から解決不可能とされていた。

■直径数百メートルの磁場で宇宙船を保護

 1960年代に生まれた解決案の1つに、地球の磁場を模した磁場を作り出し、宇宙船を包み込むというものがあった。地球の両極の弱い磁場は、侵入しようとする宇宙線をはじき、地球上の生命を守っている。だがこれを実現させるには、直径数百キロにおよぶ磁場を作らなければならず、そのためには巨大な装置が必要となり宇宙船の燃料も使い果たしてしまう。その上、強力な磁場は乗組員に影響を及ぼす可能性もあるため、このアイデアは採用されなかった。

 しかし、英国とポルトガルの研究チームがこのアイデアを新たに検討した結果、実際にはそれほど巨大な磁場は必要はなく、直径数百メートルで十分だとする結論に達した。

「米人気ドラマ『スタートレック(Star Trek)』では、スコッティ機関長が宇宙探査船エンタープライズを陽子ビームから守るためにシールドを作動させた。今回のアイデアは、これとほとんど同じものだ」と、研究チームの1人、ラザフォードアップルトン研究所(Rutherford Appleton Laboratory)のボブ・ビンハム(Bob Bingham)氏は話す。

■元飛行士の39人が白内障に

 米航空宇宙局(NASA)が2001年に実施した調査の結果、少なくとも39人の元宇宙飛行士が、宇宙飛行後に白内障になっていたことが判明した。うち36人は地球周回軌道を越えて飛行していたという。

 NASAはまた、喫煙しない40歳男性が火星まで往復した場合、地球帰還後に不治のがんを発症するリスクは40%になり、地球上でのリスクの2倍になるとする試算をはじき出している。(c)AFP/Richard Ingham