【10月17日 AFP】米国の科学者らは15日、たった1つの脳細胞が、まひした筋肉の随意運動を回復するとの研究報告を発表した。

 脊髄(せきずい)の損傷や脳梗塞(こうそく)によるまひの新たな治療実験で、サルが1つの脳細胞を利用して、薬物によって動かなくなった筋肉を数分で動かすことができたという。

 人間の脳には1000億の神経細胞があるが、今回の研究は、それらの細胞が行うことのできる仕事には、思いもよらない幅広い柔軟性があると指摘している。

 論文の主執筆者であるワシントン大学(University of Washington)のChet Moritz氏は、電話会談で「実験した神経細胞のうち大半が、(今回の研究のようにまひした筋肉を再び動かせるようにするといった)刺激をコントロールするのに利用することができた」と述べた。

 Moritz氏は、サルができるのであれば、人間ならもっとうまくやることができるだろうと語った。

 実験では、まず、通常の神経経路を人工的に遮断し、手首を動かすことができなくなったサルの脳の運動皮質内の神経細胞に電極を1本ずつ接続し、電気的活動を記録した。

 これらの信号は、リアルタイムでコンピューターに送信され、電気刺激装置を経由して、手首の筋肉につながっている電極に送られた。

 この結果、サルは、「脳内のそれぞれの神経細胞の役割を変えることで、10分ほどで急速に新たな脳神経の使い方を覚え」、手首を動かせるようになった。

 現在使用されているコンピューターの大きさは携帯電話ほどだが、計算処理があまり必要ないため、将来的には無線通信を利用して、直接人体に埋め込むことのできるサイズにまで小さくなるという。

 Moritz氏によると、臨床試験までには、少なくともあと数年以上、あるいはそれ以上の期間がかかるという。(c)AFP/Marlowe Hood