【9月24日 AFP】あなたにはフランス車ルノー(Renault)の「トゥインゴ(Twingo)」が、笑った顔に見えますか? フォルクスワーゲン(Volkswagen)の「ビートル(Beetle)」はおっかなびっくりの顔? 旧東ドイツの国産車「トラバント(Trabant)」は悲しそうで、BMWは怒った顔?

 わたしたちがこのように車の正面を見て人間の表情を連想するのは、顔から重要な情報をつかもうとする生来の習性のせいだという研究報告が、今週発売された科学誌「ヒューマン・ネーチャー(Human Nature)」に発表された。

■顔からの情報スキャンは生存メカニズムの名残

 人間はほかの動物同様、他人を一瞬見るだけで、その人が敵対的か協力的か、見知らぬ者か近親者かを判断する能力を発達させてきた。これは先史時代には生死を分けた重要な生存メカニズムの名残だ。

 ウィーン大学(University of Vienna)のカール・グラマー(Karl Grammer)氏率いるチームは、このメカニズムが自動車にも適用されうるのかどうかを実験した。

 男女比半々の成人グループ40人に、同色の38車種の前部の写真を見せ「顔に見えるかどうか、見えるとすれば人間の顔と動物の顔のどちらに近いと思うか」などを質問。さらに「子ども」「大人」「友好的」「敵対的」「男性的」「女性的」「尊大」「幸せそう」「消極的」「積極的」など全19項目の中から、印象として当てはまるものにチェックを入れてもらい、最後に好きな車を選んでもらった。

 結果は、回答者の3分の1以上が、9割以上の車種について「顔に見える」と答えた。また、すべての回答者がヘッドライトが「目」、フロントグリルが「口」に見えると回答した。さらに印象については、コンピューターがそれぞれの車種について人間の顔をもとに分類した「表情」とほぼ一致することがわかった。

■好かれるのは「力強い」顔の傾向

 好みの車については男女ともに、研究チームが「力」を表わす表情だとカテゴリーした「大人っぽい、支配的、男性的、尊大、怒っている」ようなデザインの「顔」を好む傾向があった。こうした車に共通した特徴は、フロントパネルが低く、フロントが幅広で、前から見ると四角くて頑丈なあごを連想させることだった。この「力」を表わすカテゴリーでは、BMWやクライスラー(Chrysler)300などが上位を占めた。 

 対照的に「おとなしい」「友好的」「子どもっぽい」といった項目にチェックが多くついたのは、日産(Nissan)のニューマーチ、フォルクスワーゲンのニュービートル、韓国・起亜自動車(Kia Motors)のキア・ピカントなどだった。

 車を見て人間の顔を連想する傾向についてチームでは、潜在的な危険を判断する際、最も手っ取り早い指標となる「顔」に関するどんな情報も見逃さないようにと発達した「判断ミス管理能力の産物と言えるだろう」とまとめている。

 今後は、こうした「顔」が車の購入や運転にどのような心理的影響をもたらすかを研究したいとしている。(c)AFP/Marlowe Hood