【8月20日 AFP】オーストラリアの先住民アボリジニの子どもたちは、数字の語彙がなくても物を数えることができる。ロンドン大学ユニバーシティ・カレッジ(University College LondonUCL)とメルボルン大学(University of Melbourne)によるこうした研究が、19日の米科学アカデミー紀要(Proceedings of the National Academy of SciencesPNAS)に発表された。

 アボリジニには、数字に関して「1つ」「2つ」「少し」「たくさん」程度の語彙しかないが、2つのコミュニティーで行った実験では、アボリジニの子どもには、物を数えるための「先天的なシステム」が備わっていることがわかった。

 UCLのブライアン・バターワース(Brian Butterworth)教授によると、この結果は、昨今復活してきた極端な「言語決定論」に相反するものだ。これは、子どもが「3つ」以上の概念を理解するには、数えるための語彙が必要とするもので、たとえば「5つ」を理解するには「ファイブ」という語彙が必要だとする。

■人間は生まれながらに数を認識できる

 実験は、アリススプリングズ(Alice Springs)北西のタナミ砂漠(Tanami Desert)周縁のコミュニティーと、カーペンタリア湾内のグルート・アイランド(Groote Eylandt)のコミュニティーに住む、4-7歳の子どもたちを対象に行われた。2つのコミュニティーは、別々の言語を話す。

 2本の棒を叩いて音を出し、音が何回聞こえたかをカウンターでカウントしてもらうといった一連の実験を行い、結果をメルボルン(Melbourne)に住む英語を話す先住民の子どもと比較した。

 その結果、両コミュニティーの子どもの「数える能力」は、英語を話す先住民の子どもと同程度または上回っていることがわかった。

 バターワース教授は、「実験結果は、人間には数を認識しそれを表現するための能力が生まれながらに備わっていること、数字の語彙がなくても物を数えることができることを示している」と話している。(c)AFP