【8月11日 AFP】メタマテリアルと呼ばれる人工の構造物の一種で、可視光を3次元で屈折させることができる新素材を発明したとする論文が、10日の英科学誌「ネイチャー(Nature)」および米科学誌「サイエンス(Science)」に同時に発表された。物体を透明にするというファンタジーの世界が、近々現実のものになるかもしれない。

 論文を発表したのは、カリフォルニア大学バークリー校(University of California at Berkeley)とローレンス・バークレー国立研究所(Lawrence Berkeley National Laboratory)のそれぞれの研究グループ。現在、透明化の現象は1メートルの10億分の1というナノスケールで実現されているが、研究者らは人間やタンカーを「透明マント」で消すことは理論的には不可能ではないとしている。

 これまでの研究で開発されていたほかのメタマテリアルを用いると、光を自然界ではあり得ない形で屈折させることができた。だが、2つの点で制約があった。1つは、この素材が光スペクトルのマイクロ波の領域でしか作用せず、波長が長いために人間の目にも見えてしまう点。もう1つは、この素材が現時点では、薄い2次元のシステム上でしか作用しない点だ。

 今回研究グループが開発した素材は、透明化を可視スペクトル全域および3次元で実現するのに必要な負の屈折率を生み出すことができるという。この技術は、高解像度の光学顕微鏡の特殊レンズの開発に応用できる可能性がある。だが究極の目標は、H.G.ウェルズ(H.G. Wells)の『透明人間(Invisible Man)』やハリー・ポッター(Harry Potter)に出てくるような「透明マント」のようなものだ。

 研究に出資した米軍は、次世代ステルス技術の先駆けとなる新素材が開発されることを期待している。(c)AFP