【7月29日 AFP】8月1日、世界各地で皆既日食が観測される。地球、太陽、月が一列に並ぶこの幻想的な天体ショーは今回、4000年前に世界で初めて皆既日食が記録された中国でも見られる。

 2006年3月以来となる皆既日食は1日午前9時23分(GMT、日本時間午後6時23分)、カナダ北端ヌナブット(Nunavut)準州から始まり、シベリア北部を通って、ロシア中部、中央アジア、モンゴル、そして中国北西部へとめぐり、陝西(Shaanxi)省西安(Xian)付近で午前11時20分(同午後8時20分)に終わる。皆既日食が及ぶ距離は約1万200キロに及ぶという。

 米航空宇宙局(NASA)で日食を専門とする天体物理学者、フレッド・エスペナック(Fred Espenak)氏によると、天候が良好ならばアジアの大半の地域、欧州北部、カナダ北部でも部分日食が観測されるという。

 ロシアの砕氷船に乗り、北極海から日食を観測するアマチュア天文家のツアーを後援している米天文雑誌「スカイ・アンド・テレスコープ(Sky & Telescope)」によると、「影に入る」範囲に住む人口は10億人以上になる。

■4000年前の中国、「太陽を食べる龍」と記録

 光、すなわち命をもたらす太陽が欠ける日食は、古くから人々の心に強く刻み込まれた。

 古代中国においては「龍が太陽を食べている」ため、シンバルや鍋を打ち鳴らして退治しなければならないと考えられていた。一方バイキングたちは、2頭のオオカミが太陽と月を追いかけていると考えた。ヒンズー教では「ラーフ(Rahu)」と呼ばれる悪魔が太陽をかじっているとみなされた。

 日食の最初の記録が残っているのは、中国夏(Xia)王朝第4代皇帝仲康(Zhong Kang)の時代だが、前後に日食は複数回発生しており、紀元前2128年か2134年のものの可能性が高いとされつつ、正確な日付は特定できていない。しかし、当時の短い記述からも、日食が人々を圧倒するものであったことが判明している。

■現在は数学で日付を特定

 現在でも皆既日食は驚異的な現象で、人類の存在の小ささを実感させるものだが、数学によって発生時期を割り出すことが可能となり、もはや迷信ではなくなった。

 NASAのエスペナック氏によると、8月1日に皆既日食が最も長く観測されるのは、ロシア北部Nadym付近で、午前10時21分(GMT、日本時間午後7時21分)から2分27秒間、続くという。これまでの皆既日食の最長記録は7分30秒。

 次回、日食が起こるのは2009年7月22日で、インド中部、バングラデシュ北部、中国中部で観測される。有史以来、最多の人々に観測されることになる可能性が高い。最近では1999年8月11日に欧州西部からインドにかけて見られた日食も多くの人が観測した。

「日食中毒」の天文ファンにとっても、安全は第一。皆既日食でも危険な紫外線は地球まで届いているため、網膜を守る光学フィルターを使用して観測する。皆既日食を生中継するウェブサイトもある。(c)AFP/Richard Ingham

NASAの皆既日食サイト(英語)