【4月29日 AFP】前年2月に南極海域で発見された体長約10メートルの世界最大のイカ、ダイオウホウズキイカ(Mesonychoteuthis hamiltoni、別名コロッサル・スキッド、colossal squid)が、実際に深海に生息する個体に比べると小さい可能性が出てきた。研究チームが29日、調査の途中経過として明かした。

■解凍には2日間

 問題のダイオウホウズキイカは現在、ニュージーランドの首都ウェリントン(Wellington)にあるニュージーランド博物館(The Museum of New Zealand)で2日間をかけて解凍中で、30日にさらに詳しい調査が行われる。

「世界最大のイカ」は体長約10メートル、体重約495キロで、目の大きさはディナープレートほど。触手の先にカミソリのように鋭い鉤(かぎ)のようなものがついており、非常に攻撃的な種とみられる。

 研究チームは初期調査の結果として、発見された個体は比較的小さい個体で、冷たい南極海域に生息するダイオウホウズキイカはもっと大きい可能性があるとしている。

■過去にはもっと大きなクチバシの発見も

「テ・パパ・トンガレワ(Te Papa Tongarewa)」の名で知られるニュージーランド国立博物館で研究チームを率いるクリス・ポーリン(Chris Paulin)氏によると、解凍途中のダイオウホウズキイカのクチバシ部分を確認したところ、下クチバシの長さが約43-45ミリメートルだった。だが、過去にマッコウクジラの胃から発見された同じ種のイカのクチバシは、長さ49ミリメートルだった。

 クチバシの長さと体長を比較して推測すると、捕獲された個体よりも大きな個体が存在すると考えられるという。

 研究チームの1人、オークランド工科大学(Auckland University of Technology)のSteve O'Shea氏は「現時点でわかっているのは、クジラの胃から発見されたクチバシが、解体中のダイオウホウズキイカのものよりもだいぶ大きいという事実だけだ。そこから、もっと大きなダイオウホウズキイカが存在すると考えることは可能だ」とのみ語り、具体的にどれくらい大きいと考えうるかについては、明言を避けた。

 捕獲されたダイオウホウズキイカを「イカリング」にすれば、トラクターのタイヤ並みの大きさになるが、アンモニア臭がして食べられたものではないようだ。

 前年2月の捕獲後は、冷凍してニュージーランド国立博物館に寄贈された。博物館では以来、最も望ましい解凍・調査・展示方法を模索してきた。

 巨大なオーブンを用いて解凍するといった方法はもちろん却下。28日にようやく、冷たい海水で満たしたタンクに漬けてゆっくりと解凍する方法で、調査への第1段階に入った。ただし、何しろ巨大であるため、内部まで解凍が完了する前に表面が腐敗する恐れがあるという。

 解凍作業は30日に完了する。研究チームができる限り詳細な調査を行った後、ホルマリン漬けにし、2009年下旬にも同博物館の巨大タンクで展示する計画だ。

 解凍の様子は、博物館の公式ウェブサイト(www.tepapa.govt.nz)で見ることができる。(c)AFP/David Brooks