【4月25日 AFP】人類はかつて、厳しい干ばつに直面したために少人数の群れに分かれた状態で10万年もの時を過ごすことを余儀なくされ、絶滅の危機にさらされていた。その後、再び大きな集団を形成し、世界各地に居住地を広げていった。このような研究結果が24日、米科学誌「アメリカン・ジャーナル・オブ・ヒューマン・ジェネティクス(American Journal of Human Genetics)」に発表された。

 この研究は、約20万年前に生存した人類の起源とされる女性「ミトコンドリア・イブ(Mitochondrial Eve)」から、7万年前に絶滅寸前の2000人に減少するまでの期間における人類の進化を初めて検証したもの。この期間の人類の軌跡についてはほとんど明らかにされていない。

 この期間を乗り越えて、人類はアフリカ大陸全土で急速にその数を増やし、さらに約6万年前に海を越えて地球全土へと居住地を広げた。これを境にアフリカ大陸で石器時代が終わり、現生人類の誕生につながる文化的発展がみられるようになった。つまり、言語を生み出し、複雑で抽象的な思考を持つようになったのである。

 研究では、アフリカ南部・東部に居住する人々を対象にミトコンドリアDNAを分析した。その結果、彼らが9万-15万年前に別の群れから枝分かれたらしいことが明らかになった。

 過去の気候や環境の変動とその要因を解明する「古気候学」に基づいたデータによると、東アフリカ一帯は9万-13万5000年前に厳しい干ばつに見舞われている。これが、人類が少人数の群れに分かれることになった一因と考えられる。

 イスラエルのラムバム医療センター(Rambam Medical Center)を拠点とする地理学者で、研究の主著者のドロン・ベハール(Doron Behar)氏らは、初期人類は人類の歴史の半分に当たる10万年という時を、ほかの群れと引き離され、小さな群れで進化したと説明する。彼らが再びアフリカで1つの大きな群れを形成するようになったのは、わずか4万年前のことだ。

 かつて2000人まで減少した人類は、いまでは66億人ほどまでに増えている。

 研究は2005年、ナショナル ジオグラフィック協会(National Geographic Society)、米IBM、ウェイト・ファミリー財団(Waitt Family Foundation)などによって立ち上げられた。(c)AFP