【12月13日 AFP】米航空宇宙局(NASA)の2台の火星探査車のうちの1台「スピリット(Spirit)」が、火星にかつて微生物が存在していたことを示す重要な証拠を発見した。米カリフォルニア(California)州パサデナ(Pasadena)にあるNASAのジェット推進研究所(Jet Propulsion LaboratoryJPL)の科学者チームが発表した。

 発表によると、スピリットが5月に発見したほぼ純粋なシリカの塊は、地球上に微生物が生存できる環境を確立したのと同様のプロセスを経て形成された可能性があるという。

 このシリカについては、温泉で形成されたという説のほか、酸性の蒸気が地表に噴き出す噴気孔で形成されたという説もある。地球ではどちらのタイプの環境にも多様な微生物が生存している。

「どちらの環境がシリカを作ったにせよ、このシリカの塊は、火星にかつて生物が生存できる場所があったことを示す証拠だ。スピリットによる、おそらく最も重要な発見だろう」と、プロジェクト主導者の1人であるスティーブ・スクワイヤーズ(Steve Squyres)氏は指摘。ハワイ(Hawaii)やアイスランドで見られるような噴気孔で形成された可能性が高いとみている。

 また、科学者チームは、かつて火星に水があり数百万年のうちに現在の乾燥した地勢に変化したと考えており、その証拠を得るため、火星のちょうど反対側に着陸したもう1台の火星探査車「オポチュニティー(Opportunity)」を使用して地表の土の成分を調査している。

 2004年1月から火星で探査を行っている2台の探査車は現在、3度目の冬に向けて準備を進めているが、特にスピリットについては、設置されているエネルギー供給源の太陽電池パネルに大量の砂じんが積もっているため、状況は厳しくなりつつある。

 JPLのジョン・カラス(John Callas)氏は「昨年の冬はスピリットを約7か月間動かさなかった。今冬はさらに静止期間が長くなり、1日に使用できるエネルギー量も大幅に減少するだろう」と語っている。(c)AFP