【11月30日 AFP】米スタンフォード大(Stanford University)医学部の研究チームが、欠陥遺伝子の働きを阻止する仕組みを発見し、マウスの皮膚を若返らせることに成功した。

 27日に発表された研究報告によると、同大の研究チームはコンピューター解析により、特定のタンパク質がさまざまな組織の老化に伴う遺伝子変化を促進することを発見。この発見をもとに、成長時に特殊な化学物質を含んだクリームを塗布すると、問題の欠陥遺伝子「NF-eB」のスイッチがオフになるよう遺伝子操作を施したマウスを開発した。
 
 実験では、この遺伝子操作を施したマウスの全身の皮膚の半分だけにクリームを塗った。2週間後に経過を調べたところ、クリームを塗った皮膚では遺伝子発現プロフィール、組織特性ともに、若いマウスの皮膚の特徴を取り戻していた。一方、クリームを塗らなかった皮膚は塗った部分よりも老化の改善がみられなかった。

 研究を主導したスタンフォード大のハワード・チャン(Howard Chang)教授は、AFPとの電話インタビューで研究の意義について「人間の老化には、疲労や肉体的消耗のみならず、遺伝的プログラムが影響していることが明らかになった。これをブロックすることで、健康改善につなげることも可能だ」と語った。

 しかし同教授は、この技術を全身に応用するのは現実的ではないという。老化を促進する欠陥遺伝子NF-eBは、免疫システムや他の細胞機能とも連携しているため、この遺伝子の活動が全身で停止することは死を意味するからだ。

 このことから同教授は、今回の発見は身体の一定の部分を治療する際への使用が適当だと考えている。次の研究段階として、心臓や肺機能の若返りへの応用研究や、若返り治療の継続の必要性、治療停止時の細胞で急速に加齢が進む危険性などの確認が必要だという。

 チャン教授によれば、すでに多くの研究者が、欠陥遺伝子NF-eBが免疫システムに果たす役割を考慮し、薬剤で遺伝子をブロックする手法を研究しているという。研究が進むにつれ、そうした薬剤が効果的に欠陥遺伝子をブロックできる日が来るかもしれないと期待を寄せている。

 人間に用いるには安全面の研究にまだ数年を要するとみられるが、この技術は全ての内臓や細胞組織に応用できることから、老化に伴う疾病や障害治療にとって朗報と言えるだろう。

 研究結果の詳細は、12月15日発売の医学誌Genes and Developmentに掲載される。(c)AFP