【11月30日 AFP】地球との類似点が多いことから「地球の双子星」と呼ばれる金星が、「温室効果」の影響で、豊かな水をたたえた安息の星から灼熱(しゃくねつ)の地獄に変化していた――。欧州宇宙機関(European Space AgencyESA)の金星探査機「ビーナス・エクスプレス(Venus Express)」による探査計画チーム研究者が、8日発行の英科学誌ネイチャー(Nature)にこのような学説を掲載した。

 金星は大気の大半が二酸化炭素から成っている上、硫酸を含んだ雲に常に覆われている。酸素はなく、水も水蒸気のみ。表面の温度はセ氏457度に達し、気圧は地球の海面下1キロの地点と同等だ。

 ところが、かつて金星の地表の一部は水で覆われており、その後、「金星温暖化」で温度が上昇したのだと、ESAの科学者Hakan Svedhem氏は主張している。

 金星は地球より太陽に近いためより、気温がその分高く、より多くの水分が水蒸気になる。水蒸気は温室効果ガスであるため、これが太陽熱を閉じこめ、温暖化を一層促進。その結果、さらに表面の水が蒸発し宇宙に消散し、最終的には海が沸騰する――。Svedhem氏の説によると、こうしたプロセスが金星に起きたのだという。

 現在も地球と金星の二酸化炭素量はほぼ同じだ。ただ、地球の二酸化炭素は土壌、岩石、海洋などに閉じこめられているのに対し、金星の場合地表が極端に高温のため、二酸化炭素が大気中に出される。

 Svedhem氏はAFPの取材に対し「つまり、金星に『暴走温室効果』と呼ばれる現象が生じたのだ。地球にも同様の物理現象が起こりうる。われわれにとって差し迫った課題だ」と語った。

 ESAの別の科学者デビッド・グリンスプーン(David Grinspoon)博士も「地球と金星で起きている温室効果の基本的な物理現象は同じだ。おそらく地球にも同じ運命が待ち受けているだろう」と指摘している。(c)AFP/Marlowe Hood