【9月27日 AFP】(一部訂正)広島大学の研究チームが、内臓が透けて見える「透明カエル」を誕生させた。解剖せずに生きたままで内臓や血管、卵子などの観察が可能だという。

 これまで透明な小型の魚類が開発されたことはあったが、両生類などでは初めて。

 研究を主導した同大の住田正幸(Masayuki Sumida)教授(両生類生物学)はAFPに対し、「解剖をしなくても1匹のカエルの内臓の成長やガン細胞の進行具合や、毒性物質が骨や肝臓などの臓器に与える影響などを、そのカエルの一生を通じて観察を続けることができる」と説明。

 カエルの解剖は理科の実験など、学校教育の場などでも幅広く行われてきた。しかし、世界的に動物愛護団体の活動が活発化。今ではコンピューターを用いた解剖のシミュレーションが奨励され、生物解剖は年々難しくなっている。

■劣性遺伝子から透明カエル誕生

 以前から、2つのタイプの劣性遺伝子がカエルの皮膚の色を薄くすることが知られていたことから、住田教授のグループは、劣性遺伝子を持つ雄と雌のニホンアカガエル(学名:Rana japonica)に人工授精を行った。しかし、通常遺伝子の効果が強力だったため、生まれてきたカエルの皮膚は通常の色だったという。

 しかし、劣勢遺伝の親から生まれたこのカエル同士をかけ合わせたところ、透明なカエルが誕生。前代未聞の突然変異体の創造に成功した。

 このカエルはオタマジャクシの段階から皮膚が透明で、「オタマジャクシからカエルに変異する過程の内臓の劇的な変化が観察できた」と住田教授は語る。

 同教授によれば、理論的には野生の「透明カエル」が存在する可能性はあるが、「事実上は不可能」という。自然界では皮膚の色に作用する劣勢遺伝子のみをかけ合わすことは不可能だからだ。

 「透明カエル」の透明遺伝子は子孫にも引き継がれるが、3代目になると、タマゴからかえってもすぐに死亡してしまうという。

 「2組の劣性遺伝子を引き継いでいるため、何らかの悪影響を及ぼすのだろう」(住田教授)

■発光カエルの誕生も可能

 今のところ、「透明カエル」の誕生は人工授精に頼っているのが現状だが、遺伝子工学技術を用いれば「透明カエル」だけでなく「発光カエル」の誕生も夢ではない。

 住田教授によると、「透明カエル」の特定の遺伝子に発光性タンパク質を組み込めば、その遺伝子が問題を起こした時にカエルの体が光るのだという。同教授は、「発光カエル」はガン細胞の発生次期の特定などに役立つと期待を示す。

 一方、ほ乳類の皮膚細胞の仕組みはカエルとは異なることから、「透明カエル」に用いた手法をネズミなどに適用することは非現実的だという。

 住田教授らは「透明カエル」の特許申請を考慮中。研究結果は次週、学会で発表される予定。(c)AFP/Miwa Suzuki