【9月21日 AFP】「ホビット(Hobbit)」とあだ名される原始時代の人類の手首の構造を分析した結果、ヒト属の新種である可能性が高いことが分かった。スミソニアン研究所(Smithsonian Institute)のMatthew Tocheri氏が20日、科学誌「サイエンス(Science)」に寄稿した論文の中で明らかにした。

 「ホビット」という愛称は、英国の作家、J・R・R・トールキン(J.R.R. Tolkien)のファンタジー小説「指輪物語(Lord of the Rings)」に登場する小人にちなんだもの。ホビットの化石は、2004年にインドネシアのフロレス(Flores)島で発見された。以来、ホビットがヒト属の新種なのか、あるいはウイルスにより脳の成長が止まった小頭症の現生人類なのか、それともピグミー(pygmy)族の祖先か、という激しい論争が続いていた。

 Tocheri氏率いる研究チームが3次元レーザー映像でこの化石の骨を調べた結果、「ホビット」の手首の構造が極めて原始的で、現代のサルか原始人類に似ていることが判明した。現生人類ホモ・サピエンス(homo sapiens)やその直接の祖先であるネアンデルタール(Neanderthal)の場合は、親指の付け根から手首全体にかけて力を分配し衝撃を緩和する構造になっているが、ホビットの手首にはその特徴がなかったのだ。

 この事実は、ホビットがヒトの進化において、現生人類やネアンデルタール以前の段階に現れたことを示唆している。Tocheri氏は「現生人類がチンパンジーの手を持っているはずがない」と指摘。「ホビット」は180万年前にアフリカから移住したヒトの祖先で、新しい手首の構造を持つネアンデルタールや現生人類とは異なると結論づけ、今回の発見によりホビットを巡る論争にけりがついたと主張している。(c)AFP