【12月18日 AFP】米IBMは17日に発表した年次予測の中で、未来のコンピュータ機器は人間の五感を模した機能を発達させ、感覚により訴えるものになっていくという予想を描いた。

 今後5年間に大きな影響力を持つ可能性のある革新技術に関する年次予測「IBM 5 in 5」では、コンピューターやその他の機器は人間の感覚を模倣した機能をいっそう獲得していくとみている。

■我慢しなくてもヘルシーな食事が可能?

 コンピューターはアルゴリズムを用いて、食品の化学的構造や、一定の味が人に好まれる理由を正確に突き止めることが可能になるかもしれないという。「体に良い食品をもっと美味にできるだけでなく、味と香りの経験を最大限広げることを目指した意外な食品の組み合わせでわれわれを驚かしてくれるかもしれない」と同社は述べている。また「糖尿病の人など特別な食事ニーズのある人たちの場合、血糖値を抑えつつ、甘いものへの欲求を満足させる香りやレシピを開発できるかもしれない」ともいう。

■風邪や病気のかかり始めを探知

 IBMでは今後5年以内に、コンピューターや携帯電話に内蔵された極小のセンサーによって、匂いや生体指標、息に含まれる何千個という分子などを分析し、風邪などの病気にかかった時にそれを感知するようになるとも予測している。

 こうした機器は医師の診断にも役立ち、肝臓や腎臓の障害、ぜんぞく、糖尿病、てんかんといった疾患の発病の監視にも有効だろうという。

■バイブレーションの活用から、赤ちゃん言葉の理解まで

 触感についても、赤外線や感圧技術を使った新しい触感技術によって例えば携帯電話で、布の質感や肌触りを再現することが可能だとIBMは述べている。「携帯電話のバイブレーション機能を活用し、触感を模したユニークなバイブレーションのパターンを持たせる」ことができ、小売部門やヘルスケア産業での可能性を挙げている。

 コンピューターはまた音の検出機能と分析機能をさらに発達させている。「5年以内に賢いセンサーによる分散システムが音圧や振動、異なる周波数の電波といった音が持つ要素を検知するだろう」という。そうした入力データを解析し、森林内で木が倒れる時や地滑りが迫るといった状況を予測する。

 また「赤ちゃん言葉」は言語として認識されるようになり、乳幼児が何を伝えたがっているのか、親や医師が理解する助けになるという。

■物を「見て」認識するコンピューターに

 IBM予測によるとコンピューター技術革新のもう一つの主要分野は、視覚データの分析機能となる。「今日のコンピューターは、われわれがタグやタイトルとして付けたテキストで画像を認識するだけで、大半の情報(実際の画像の内容)は認識していない。(しかし)5年以内には、画像や視覚データの内容をシステムが見て認識できるようになるだけではなく、画素を意味として還元し、そこから人間が写真を見て解釈するのと似た方法で認識するようになるだろう」

 こうしたアプリケーションはX線撮影や全身スキャニングによる画像の分析に役立つが、同時に小売業から農業まで幅広い産業に影響を与えそうだ。

 IBMのバーニー・メイヤーソン(Bernie Meyerson)イノベーション担当副社長は「コンピューターが自分たちのまわりの世界を理解できるようになるよう、世界中のIBMの研究者たちが協力しながら進めている」と語る。「人間の脳が複合的な感覚を用いた世界とのやりとりに頼って打開策を組み合わせているように、認知システムは、最も複雑な課題をわれわれが解決する助けとなるような、いっそう素晴らしい価値や見識さえもたらすかもしれない」(c)AFP