【9月3日 AFP】米国で「スーパーWi-Fi(Super Wi-Fi)」と呼ばれる新たな無線通信テクノロジーが一部地域でサービスを開始した。無線LANのホットスポットよりも広いエリアからの接続が可能な技術で、英国やブラジルなど外国からの注目も集めている。

 スーパーWi-Fiは、無線LAN規格のWi-Fi(ワイファイ)とは別の周波数帯域を使用し、特別な機器を必要とするもので、正確にはWi-Fi技術ではない。しかし、未使用のテレビ放送電波帯域を使って無線ブロードバンドを提供するこの技術は、Wi-Fiの持っている利点を備え、さらに独自の利点を加えた技術として、スーパーWi-Fiの名称で2010年に米連邦通信委員会(Federal Communications CommissionFCC)が承認していた。

 テレビ放送用の帯域を使うため、無線信号はWi-Fiよりも広範囲に届く。理論値では最大160キロメートル(100マイル)先まで届くというが、実際の利用時には到達範囲は数マイルの距離にとどまる見込み。

■広いエリアをカバーするスーパーWi-Fi、機器拡充に期待

 米シンクタンク「ニュー・アメリカ・ファウンデーション(New America Foundation)」による「無線の未来プロジェクト(Wireless Future Project)」責任者、マイケル・キャラブリーズ(Michael Calabrese)氏は、放送用の周波数帯域を利用できることがこの技術の利点であると説明する。

「Wi-Fi利用は急増してきたが、数百メートルの範囲内にしか届かない周波数帯域でしか運用することができなかった」とキャラブリーズ氏は述べる。「テレビの周波数帯域なら低出力で長距離に到達することができ、建物や木々、悪天候などの中も通過することができる」

 この技術を使えば、現在ブロードバンド接続が提供されていない地方の住宅が少ない地域に、高速度インターネット接続を提供することができるようになる。また、消費者が自分用のホットスポットを作成し、自宅から離れているときにそれを利用することができるようになる。

 史上初めてのスーパーWi-Fiは昨年、テキサス(Texas)州ヒューストン(Houston)のライス大学(Rice University)で始まった。また今年初頭にはノースカロライナ(North Carolina)州ウィルミントン(Wilmington)でもサービスが開始されている。

 2013年初頭には米グーグル(Google)とマイクロソフト(Microsoft)が支援する「AIR.U」プロジェクトにより、米国地方部にある大学キャンパスにスーパーWi-Fiの導入が始まる。

 現在は、機器の不足により、スーパーWi-Fiは既存のWi-Fi通信規格に変換されて利用されている。いずれ、専用の機器が普及してスーパーWi-Fiをそのまま利用することができるようになるだろう、とキャラブリーズ氏は語った。(c)AFP/Rob Lever