【3月31日 AFP】車の中を「動くホットスポット」に――。自動車向けの無線LAN技術を駆使した、インターネット接続が可能な乗用車が続々と登場しつつある。市場調査会社iSuppliは、2010年に17万4000台を売り上げた自動車向けWi-Fiシステムは、17年までに720万台に増加すると見込んでいる。

 専門家の分析によれば、多機能携帯電話(スマートフォン)やタブレット型PCでおなじみとなった「アプリ」を活用した情報収集や娯楽を、車の中でも楽しみたいという消費者の要望は高まりつつある。

「当初、車内からネットに接続するなど運転手の注意を散漫にする軽薄な行為だと思われていた。でも、今ではネットは人びとの生活の一部と化し、アクセスできないと居心地が悪いと感じるものになった」と、通信アナリストのジェフ・ケーガン(Jeff Kagan)氏は指摘する。

■大手メーカーが搭載車を開発、規格共有の動きも

 車内Wi-Fiはここ数年、別売りの車載付属品として普及してきた。しかし、ここに来て主要自動車大手が続々と、無線LAN搭載モデルを発売したり、開発を進めたりし始めた。

 フォード・モーター(Ford Motor)は2010年から、複数の車種でWi-Fiを提供している。ゼネラル・モーターズ(General MotorsGM)、BMW、アウディ(Audi)、サーブ(Saab)、クライスラー(Chrysler)なども、何らかの形でのインターネット接続を提供している。

 3月中旬には、フィンランドの通信機器大手ノキア(Nokia)が、ダイムラー(Daimler)、GM、ホンダ(Honda Motor)、現代自動車(Hyundai Motor)、トヨタ自動車(Toyota Motor)、フォルクスワーゲン(Volkswagen)など11社と、車載LANに関する技術規格を共有する「カーコネクティビティ・コンソーシアム(Car Connectivity Consortium)」を発足すると発表した。

■車内娯楽から盗難対策まで、広がる可能性

 米カリフォルニア州の米カリフォルニア(California)州の企業、オートネット・モバイル(Autonet Mobile)のスターリング・プラッツ(Sterling Pratz)CEOによれば、同社が提供する月額29ドル(約2400円)の車載Wi-Fiサービス「CarFi」の利用者は、全米で1万人以上に上る。「インターネットを基盤としたテレマティクスとアプリケーションサービスのプラットフォームとしては初の自動車業界向けのサービス」を自負する同社は先日、GMと富士重工業(Fuji Heavy Industries)と契約を結んだ。

 プラッツCEOはAFPの取材に、車の利用者は車内の娯楽の充実を求めており、ネットで動画やゲーム、ソーシャルネットワーキングサービス(SNS)を楽しみたいと思っていると指摘。次のステップとして、両親が10代の我が子の運転する車のスピードを確認できる装置や、車両が盗難に遭った場合に行方を追跡するシステムの開発を考えていると語った。(c)AFP/Rob Lever