【1月13日 AFP】まもなく誕生から10周年を迎えるオンライン百科事典「ウィキペディア(Wikipedia)」は、今や、パソコンで手早く調べ物をする際に欠かせない存在になっている。ウィキペディア財団の次の目標は、この百科事典を世界中で閲覧できるようにすることだ。

 オンライン百科事典プロジェクト「ヌーペディア(Nupedia)」の立ち上げに失敗したジミー・ウェールズ(Jimmy Wales)氏は、2001年1月15日、ウィキペディアを創設した。

 ウェールズ氏自身もそれほど期待せずに始めたウィキペディアだが、現在は250を超える言語で利用可能で、記事数も2600万本以上と充実している。米調査会社コムスコア(comScore)によると、ウィキペディアは世界で5番目に人気のあるサイトとなっている。

■次のターゲットは発展途上国

 携帯電話からのアクセスが増え、ネットリテラシーも向上するなか、主に先進国に展開しているウィキペディアが次にターゲットにするのは発展途上国だ。

 ウィキペディアは近々、米国外では初めてのオフィスをインドに開設する。経済が急速に発展し、情報に飢えた中流層が急増する同国で、オープンソースの百科事典であるウィキペディアの認知度を上げるのが狙いだ。

 中国政府が同サイトへのアクセス制限を継続するなか、中国語版ウィキペディアの拡充も図っていく。

■「ウィキペディアン」の傾向

 ウィキペディアを執筆・編集する「ウィキペディアン」は世界に数百万人いる。全員ボランティアだ。中でも、毎月5本以上の記事を執筆・編集するウィキペディアンは約10万人もいる。

 ウィキメディアのスー・ガードナー(Sue Gardner)事務長によると、ウィキペディアンの多くは、「世界をより良くしたい。情報へのアクセスは人間の権利である」との動機から参加しているという。

 なお、ウィキペディアンで多いのは「数字などの細部にまでうるさい」「20代半ば、男性、理系の大学院生」だという。

■実は高い信頼性

 なお、ユーザーが独自に編集することから、内容が偏っていて信頼できないとの批判がある。ウィキペディアの参照を推奨しない高校や大学も多い。 

 だが、英科学誌ネイチャー(Nature)が2006年に行ったウィキペディアの正確性に関する調査では、誤りの数が百科事典の金字塔「ブリタニカ百科事典(Encyclopaedia Britannica)」とさほど変わらず、「驚くほど優れている」という結果が得られた。

 ガードナー氏も、オープンソースであることの危険性は承知しているが、ウィキペディアの信頼性には自信を持っている。 

「ウィキペディアの驚くべき点は、完全にオープンで、完全な透明性のもとで行われる大規模な共同作業が、専門家による厳密な審査という手続きよりも、はるかに大きな利点をもたらしたことだ」(ガードナー氏) 

■「非営利団体」であり続ける

 ウィキペディア財団は最近、2010年の寄付金の目標額1600万ドル(約13億3000万円)を達成した。これは前年の2倍を超える額だ。ガードナー氏は、約50人の職員を抱える同財団は今後も非営利団体の形態を維持していけると考えている。(c)AFP/Ron Bousso