【9月25日 AFP】発電所や化学工場、浄水施設で使用されている独シーメンス(Siemens)の特定のシステムを標的にし、イランを中心にインドやインドネシア、パキスタンなどでまん延しているコンピューターウイルス「スタクスネット(Stuxnet)」について、米サイバーセキュリティ当局者は24日、このウイルスを分析しているところだが、ウイルスを作成した人物や動機についてはまだわからないと述べた。

 6月にスタクスネットがみつかって以来、このウイルスの分析を続けているドイツのコンピューターセキュリティー専門家のラルフ・ラングナー(Ralph Langner)氏によれば、スタクスネットは、ある特定の施設の管理ネットワークを認識し、それを破壊する能力を持つ。

 スタクスネットはシーメンスの「SCADASupervisory Control and Data Acquisition)」システムをターゲットに設計されている。SCADAシステムは、多くの水道施設や原油掘削施設、発電所などの工業施設でデータ収集と施設の管理に使用されている。

 米国土安全保障省(Department of Homeland SecurityDHS)のサイバーセキュリティ機関、国家サイバーセキュリティー・通信統合センター(National Cybersecurity and Communications Integration CenterNCCIC)のショーン・マッガーグ(Sean McGurk)局長は米ワシントンD.C.(Washington D.C.)そばにあるNCCIC施設で記者団に対し、「(スタクスネットの)本体の分析を行った。最も困難なのは動機と帰属の特定だ」と語った。

 マッガーグ氏は「これまでのところ、(スタクスネットが)特に悪意のある動作をしたケースは確認されておらず、その影響力や効果も確認されていない」と述べ、ウイルスの背景にいるのは何者なのかとの質問に「憶測するにはまだ早すぎる段階だ。出自はわからないが拡散防止に努めている」と語った。シーメンスも顧客と連絡を取って感染対策につとめているという。

ラングナー氏は、スタクスネットの標的はイランのブシェール(Bushehr)原発ではないかと指摘する。8月に核燃料が搬入されたブシェール原発は、詳細不明の問題により施設のフル稼働が遅れている。(c)AFP

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