【8月1日 AFP】学位はとれないが授業料もとられない――。そんな教育システムが米国を中心に広がり始めている。

 動画共有サイト「ユーチューブ(YouTube)」は最近、全米100以上の大学から提供された講義の動画を集めた「ユーチューブEDU(YouTube EDU)」を立ち上げた。

 カリフォルニア大学バークレー校(University of California at Berkeley)、コロンビア大学(Columbia University)、コーネル大学(Cornell University)など名門校から数千本の動画が提供されており、マサチューセッツ工科大学(Massachusetts Institute of TechnologyMIT)のウォルター・ルーウィン(Walter Lewin)教授(物理学)の授業風景を収めた動画はすでに数十万回再生されている。
 
 ユーチューブEDU上のコースは課金されない代わりに単位も取得できないが、単位を取得できるオンラインコースを提供する学校も増加している。

 高等教育でのオンライン教育の活用を目指す非営利団体Sloan Consortiumが2008年11月に発表した調査によると、07年に1つ以上のオンラインコースを履修した米国の学生は390万人を超えた。これは前年を12%上回る水準。背景には景気後退、失業率とガソリン価格の上昇などがあると調査は指摘している。

■世界に平等な教育の機会を

 無償で教育を提供しているのは大学だけではない。

 英科学誌「ネイチャー(Nature)」の発行元ネイチャー・パブリッシング・グループ(Nature Publishing GroupNPG)傘下のNature Educationは1月、科学を学ぶためのオンラインスペース「Scitable.com」を立ち上げた。

 Nature Educationの出版責任者ヴィクラム・サブカー(Vikram Savkar)氏はAFPに対し、「Scitableでやりたいことは、今日使えるあらゆるツールや技術を使って21世紀の教育を活気づけることだ」と語る。

 サブカー氏は「科学は医療、農業、工業などほとんどすべての分野に影響しているが、最も優れた科学情報・教育に接する機会は世界中どこでも公平というわけではない」と語り、「平等な条件を整えること」が目標の1つだと説明した。

 現在では85か国の人たちがScitableのコンテンツを利用している。今のところ遺伝学のみが対象となっているが、今後、細胞生物学、分子生物学、創薬、生命工学、神経科学などに分野を拡大し、最終的には化学や物理学にも触れたいという。

 さらに、4、5年後をめどに、広告・スポンサー契約のほか、個人指導や就職あっせんサービスなどで経営的に自立することを目指すという。(c)AFP/Chris Lefkow

【参考】
YouTube EDUのホームページ(日本語)
Scitable.comのホームページ(英語)