【6月14日 AFP】米中央情報局(Central Intelligence AgencyCIA)は、ブログやウィキ(Wiki)といったいわゆる「Web 2.0」のツールを取り入れ始めた。だが、情報を共同作業で編集したり公開したりするという概念は伝統的なインテリジェンス・コミュニティーの文化にそぐわず、システム導入は容易ではないようだ。
 
 CIAは2005年に情報機関版「ウィキペディア」ともいうべきイントラネットのコンテンツ管理システム「Intellipedia(インテリペディア)」のパイロット版を開始した。2006年4月に本格稼働し、現在16の米情報機関が参加している。現在、毎日平均で約4000回の編集が加えられている。

 だが現時点に至るまで苦労の連続だと、インテリペディア導入プロジェクトの責任者であるCIAのショーン・デネヒー(Sean Dennehy)氏は話す。「インド独立の父マハトマ・ガンジー(Mahatma Gandhi)の言葉に『最初は無視され、次にあざけられ、そして闘いを挑まれ、最後に勝利する』というものがあるが、われわれは現在、無視され、あざけられ、闘いを挑まれている段階で、勝利はまだ先だ」と語る。
 
 情報機関で情報共有のウェブサイト・システムを取り入れるのは、いわば「親からいけないことだと教えられ育ってきたことをやれというのと同じだ」とデネヒー氏は指摘する。「文化の違いがあまりにも大きすぎる」

 情報を秘匿したいという欲望に駆られるのは情報機関の人間にとって当然のことだが、これも問題となっている。インテリペディア導入プロジェクト・チームは、全員から必ず最初に「どうすれば、このページをロックできるか?」「どうすれば5人の同僚以外、このページにアクセスできないようにできるのか?」といった質問を受けたという。

 CIA勤務26年のベテランで技術革新責任者であるカルビン・アンドラス(Calvin Andrus)氏は、局員たちの会合で、1週間以上前に戦争が終わっていたのを知らずに米軍と英軍が衝突した1815年1月の「ニューオーリンズの戦い(Battle of New Orleans)」を引き合いに出して「今の時代には迅速な情報伝達が必要。ウィキのように情報を共有したり直接編集できるシステムは強力なツールになる」と力説したという。

「イラクでは目標の人物があるレストランにいるという情報を得てから15分後に爆弾を落としたこともあった。われわれは一定時間内に下される政策決定の数が指数的に増えている時代に生きているんだ」(c)AFP/Chris Lefkow