【4月25日 AFP】バンドを結成するには、6本の指と3台の「iPhone」があれば十分。これを実証したのがオーストリアの3人組ユニット「iBand」だ。

 20台半ばの3人からなる「iBand」が最初に注目を集めたのは2月。「Life is Greater than the Internet(人生はインターネットより素晴しい)」と題する音楽ビデオを動画投稿サイト「ユーチューブ(YouTube)」で公開したのがきっかけだ。指なしの手袋をした6つの手が3つのiPhoneのタッチスクリーンをたたいてギター、キーボード、ドラムの音を奏でる様子を上から映したもので、これまでに280万件以上のアクセスがある。

「実験的にやったものだったからアクセスの多さにかなり驚いたけど、とてもうれしい」とドラム担当のセブ(Seb)さんは語る。

 米アップル(Apple)が販売するポケットサイズの携帯電話「iPhone」の可能性に魅了された3人は、前年12月に米国でiPhoneが発売されるとすぐに取り寄せ、付属ソフトを使って演奏を始めた。

「ソフトが存在する前から構想はあった」と語るのは、美術・通信を専攻する学生でボーカル・ピアノ担当のマリーナ(Marina)さんだ。

 iPhoneの演奏はとても簡単で、これまでに3曲のポップソングを作曲したという。

 マリーナさんの兄弟でギターを担当するロジャー(Roger)さんは「もちろんスクリーンはあまり大きくないし、本物の楽器の長所をすべて備えているじゃない」としながらも、「例えば1つのコードに異なるメロディーをのせるという具合に設定を自由に変えられるし、新しいプログラムがある限り、新しい音を生み出せる」とiPhoneの可能性を語る。

 iPhoneの唯一の限界は、ニュアンスを欠くことだ。スクリーンを触る強弱が音色に反映されないため、クラシックやジャズには向かないのだという。

 2本の指だけで演奏するのは肉体的にもきついが、セブさんは「指はドラムスティックのようなもの。うまく演奏するには手をリラックスさせるのが大切なんだ」と語る。

 レコード会社とはまだ契約を結んでいない。コンサートを開くなら少なくともあと10曲は曲が必要だそうだが、実際に開催計画があるという。「(コンサートは)型にはまったものにはならないだろうね」とセブさんは語った。

 インターネットから恩恵を受けている3人だが、ネットサーファーには仮想世界の外で生きるよう助言する。

「多くの若者は、大半の時間をオンラインゲームなどインターネットに費やす。iPhoneの演奏を通じて、彼らにメッセージを伝えられるかもしれない」とロジャーさんは語る。

「人生は外の世界にあるってことを忘れちゃいけない」とマリーナさんもうなずいた。(c)AFP/Luc Andre

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