【1月7日 AFP】(1月8日 一部更新)世界最大規模の家電見本市「2008国際コンシューマー・エレクトロニクス・ショー(CES)」が7日から開幕する米国ネバダ(Nevada)州ラスベガス(Las Vegas)で6日、マイクロソフト(Microsoft)のビル・ゲイツ(Bill Gates)会長が基調講演し、今後10年間の新デジタル時代の展望を語った。

 講演会場のホテル「ザ・ベネチアン( the Venetian)」は超満員となった。ゲイツ会長は、過去10年間でいかに「ユビキタス(インターネットなどの情報ネットワークに、いつでも、どこからでも意識せずにアクセスできる環境)」が実現されたかを説明し、今後10年間にはさらに大きな技術革新が見込まれると明言した。

「第1次デジタル時代は大成功を収めたが、これは始まりに過ぎない。今後10年間の第2デジタル時代におけるより速い、より大きな発展を妨げるものは何もない」。ゲイツ会長によると、現在世界中で使用されているパソコンは10億台以上、世界人口の40%以上が携帯電話を持っているという。

■ソフトはネット上に、ハイビジョンは当たり前に

 新デジタル時代の展望についてゲイツ氏は、「ユーザー中心」傾向がますます強まり、メディアやエンターテインメント分野ではソフトウエア指向が進むと語った。「第2デジタル時代は今よりも『人と人をつなぐこと』に焦点が当てられるようになるだろう。それらを可能にするソフトはインターネット上で実行され、ソフトウエア・サービスが最大限活用されるだろう」

 ゲイツ氏のこの展望は、長年マイクロソフトの基幹分野だったユーザーが自分のコンピュータにインストールするためのパッケージソフトから、市場が離れていっていることを認めた見解といえる。

 映像面では、テレビから屋外広告までハイビジョンビデオは「当たり前」となり、デスクやテーブルの中に「内蔵」さえされると予告した。より現実感が増している3D映像は、ビジネスや買い物から生活の隅々にまで浸透し、バーチャル世界の中をみんなが「歩き回る」ようになるだろうという。

■よりユビキタスなアクセス、インターフェースはナチュラルに

 家電同士はさらにつながり、「いつでも、どこからでも」自分のデータにアクセスできることを「みんなが当然と考える」ほどユビキタス環境は充実するとゲイツ氏はいう。「機器の間のデータ移動をユーザーがする必要も、何をどこに保存してあるかを覚えておく必要もなくなる」

 第1次デジタル時代を象徴したのがキーボードとマウスだったとすれば、新時代はタッチスクリーンやジェスチャー・コントロールといった「ナチュラル・インターフェース(natural user interfaces)」に象徴されるとゲイツ氏は語る。

■ずらりと並ぶ最新のハイテク家電

 7日から10日まで開催される「2008国際CES」の会場、ラスベガスコンベンションセンター(Las Vegas Convention Center)には新時代の革新技術を披露しようと家電メーカー数千社が集結する。家庭用電化製品のトレンド、使用機会、新製品の創造などにハイライトを当てた20以上の「テクゾーン(TechZones)」で詳しく披露される。またカンファレンスプログラムでは、専門家たちが業界で旬の話題について討論する。

 出展しているZagg Inc.Nate Nelson氏は「ここには最新のハイテク機器と、それを好きな人たちが集まっている」と語る。

 各メーカーの売り込みの手法は、俳優やミュージシャン、マジシャンやコメディアン、スポーツ選手らをプロモーターとして配するという華やかながら伝統的な手法だが、並ぶ家電はフラットパネル・テレビから携帯電話、コンピューター制御による住宅や車まで最新技術を駆使した製品だ。

■ゲイツ氏、7月に第一線から退き

 これまでCESの基調講演を11回行ってきたゲイツ氏は、7月に、マイクロソフトで日常業務にあたる役割からは退き、自身の運営する慈善基金「ビル・アンド・メリンダ基金(Bill and Melinda Gates Foundation)」の活動に集中する。

 ロックバンドU2のボーカル、ボノ(Bono)やコメディアンのジョン・スチュワート(Jon Stewart)、さらにマイクロソフト役員たちがゲイツ氏を風刺するビデオが流れた後、同氏は「17歳の時以降、フルタイムでマイクロソフトで働いていないことは初めてだ。マイクロソフトをまったく離れる日がどんな日になるか分からない。たぶん不思議な気分だろう。けれど、このビデオみたいにはならないだろうね」と語った。(c)AFP/Glenn Chapman