【7月29日 AFP】米国の動物園が、絶滅危惧種のスマトラサイを保護するための最後の手段として、きょうだい同士での交配に乗り出すことを決めた。

 飼育員らによると、米オハイオ(Ohio)州のシンシナティ動物園(Cincinnati Zoo)で、6歳のオスのハラパン(Harapan)と、ハラパンの姉にあたるスシ(Suci)との交配が早ければ8月にも行われる見通しだ。

 この計画に対しては感情的な反発が起きている。だが、リンダー絶滅危惧種保護研究センター(Lindner Center for Conservation and Research of Endangered Wildlife)のセンター長、テリ・ロス(Terri Roth)氏は、他に選択肢がないと語る。

 とはいえ、近親交配には危険性がともなう。異常や、遺伝子の有害な変異、生まれた子どもの精子の質の低下などが挙げられる。

「近親交配はそうでない場合と比べて問題を起こしがちなので、一般論では、私たちも近親交配という発想には大反対だ」と、米スミソニアン保全生物学研究所(Smithsonian Conservation Biology Institute)のデービッド・ウィルト(David Wildt)所長は語る。「(今回のやり方を)解決方法と言えるかどうかは不確かだ。これは戦略ではあるだろう。そして健全な議論を喚起するのは確かだ」

 自然保護活動の専門家たちによれば、野生のスマトラサイは、最も少なく見積もって、生息地のインドネシアとマレーシアに100頭ほどしか存在していない。また、飼育下のスマトラサイはわずか10頭ほど、うち4頭は近縁で、しかも3頭はシンシナティ動物園で最近生まれた個体だ。(c)AFP/Kerry SHERIDAN