【5月22日 AFP】南アフリカの初期人類は、湿潤な気候の時代に、文化・技術面で飛躍的な進歩を遂げたという英研究チームの論文が21日、英科学誌ネイチャー・コミュニケーションズ(Nature Communications)に発表された。人類進化の考古学的記録と気候変動の記録との比較による研究で明らかになった。

 解剖学的現代人の現生人類ホモ・サピエンス(Homo sapiens)がアフリカに最初に現れたのは、今から約28万年前から3万年前まで続いた中石器時代だった。

 南アフリカで見つかっている人類の文化・技術の最古の実例の中には、革新的な進歩の痕跡を示す化石が発見されているものがあるが、何がこの進歩を引き起こしたかは、科学者らの間で謎のままだった。

 この化石記録により、人類が顕著な進歩を遂げた時代は、1つは約7万1500年前で、もう1つは6万4000年前から5万9000年前の間であることが明らかになっている。この時代の革新的進歩の例としては、複雑な言語の発達に関連する彫刻での記号の使用や、石器や貝殻で装飾した装身具の作成と使用などが挙げられる。

 論文の執筆者の1人、英カーディフ大学(Cardiff University)地球・海洋科学研究科のマーティン・ジーグラー(Martin Ziegler)氏はAFPの取材に、「これらの革新の時代のタイミングが、急激な気候変動が発生した時期と一致することを、われわれは初めて明らかにした」と説明した。

 同氏は「文化的進歩が見られたこれらの時期に、南アフリカが通常より湿潤な状況にあったことを発見した」として、「また同時期に、サハラ以南のアフリカの大部分は通常より乾燥した状況だったため、南アフリカが初期人類の退避地として機能した可能性がある」と述べた。

 研究チームは、南アフリカ東海岸で採取した堆積物コアを使用して、過去10万年間の南アフリカの気候を復元した。堆積物コアの調査では、河川の流量と降雨量が明らかになる。

 ジーグラー氏は「これにより、同時期の考古学的記録と気候変動記録との比較が初めて可能になり、現生人類の起源を理解する助けになる」と電子メールで説明した。

 論文の執筆者の1人、英ロンドン自然史博物館(London Natural History Museum)のクリス・ストリンガー(Chris Stringer)氏によると、今回の研究結果は、人口増加が人的交流の増加を通じて文化的進歩を促進するという見方を裏付けるものだという。

 論文は「南アフリカおよびさらに広範囲で、気候変動によって誘起されたこのような動向はおそらく、アフリカの現生人類の行動様式に見られる主要な要素の起源と、その後に起きたホモ・サピエンスの先祖の故郷からの分散にとって不可欠だったのだろう」と結論付けている。(c)AFP