【5月9日 AFP】毎年の移動の際、沿岸地域の湿地帯に飛来する渡り鳥たち数百万羽が沿岸部の干拓や埋め立てと海面上昇によって餌場を奪われ、死滅する危機に瀕しているとの警告が、6日の英学術専門誌「英国王立協会紀要(Proceedings of the Royal Society B)」に掲載された。

 豪政府の国家環境調査プログラム(National Environmental Research Programme)のチームが率いる岸辺の鳥類の移動習性に関する研究は、主な餌場の23~40%が失われれば、生息数の減少は70%にも達しかねないと指摘している。すでに30~80%と、憂慮すべき生息数減少が起きている地域もあるという。

 研究メンバーのリチャード・フューラー(Richard Fuller)氏は「毎年、数百万もの岸辺の鳥たちがロシアやアラスカから、東南アジアやオーストラリアへ移動する途上で休息のため、餌を食べるために、沿岸部の湿地帯に立ち寄っている。(しかし)そうした湿地帯の一部は海面上昇に非常に影響を受けやすく、今後数十年で消滅するかもしれないことを発見した。鳥たちは『給油』のためにそうした地域に立ち寄れなければ、繁殖地への旅を完遂することができないだろう」と懸念している。

 渡り鳥の旅は時に地球を半周することさえある。研究チームが調査した湿地帯は渡り鳥の移動ルートに沿い、アラスカからロシア、中国、北朝鮮、韓国、日本、フィリピン、ベトナム、タイ、マレーシア、インドネシア、パプアニューギニア、オーストラリア、ニュージーランドにまで至っている。

 多くの場合で鳥類が長旅の途上で餌場とする干潟がすでに、沿岸部の急速な開発や開墾によって侵食されていた。危機に瀕している兆候を示している鳥には、オオソリハシシギ、サルハマシギ、オバシギ、キアシシギ、メダイチドリ、コオバシギなどが含まれるという。(c)AFP