【3月20日 AFP】悪化の一途をたどる原因不明の「クラゲ大発生」現象は、トロール漁による小魚の乱獲が引き起こしている証拠をつかんだとする論文が、米誌「ブレティン・オブ・マリン・サイエンス(Bulletin of Marine Science)」に掲載された。

 海洋生物学者らは同じ海流が横断する、約千キロ離れた2つの海域の生態系を観察した。1つは漁業規制がないナミビア(Namibia)沖の海域、もう1つは南アフリカ沖の海域で、ここではイワシ、カタクチイワシ、ニシンなどの「餌用魚」の漁獲高が生息数に応じて管理されている。

 論文の共著者の1人、仏開発研究局(Institute for Development Research IRD)のフィリップ・キュリー(Philippe Cury)氏は19日、AFPの取材に「1960年代、ナミビア沖海域のイワシの年間漁獲高は1000万トンだった。これが今や、1200万トンのクラゲに取って代わられてしまった」「イワシなどの小魚類は、ずさんな管理下で過剰に乱獲され、今やほとんど姿を消してしまった」と語った。一方、南アフリカでは餌用魚の生息数が厳重に管理されており、これまでクラゲの大発生は起きていないという。

 多くの海域でクラゲの生息数が爆発的に増加している問題については、専門家らによる激しい議論が戦わされてきた。考えられる原因として、底引き網漁による海底生態系の破壊、クラゲの生息数を支配する捕食魚の激減、海水の温度を上げる温室効果などがこれまで指摘されてきた。

 だがキュリー氏は今回の新しい調査・研究によって、食物網の中の小さいが重要な一角を除去した影響が原因として示唆されると言う。「小魚が海域から姿を消すと、クラゲは食料源のプランクトンを独占できる。その結果、クラゲが制御不能なほど大発生することになる」とキュリー氏は指摘。このため、海洋生物の構成比率において、一定量の餌用魚を保持することが不可欠なのだという。(c)AFP