【2月6日 AFP】世界遺産に登録されているサンゴ礁グレートバリアリーフ(Great Barrier Reef)を傷つけていると考えられてきた小さなカニが、実はサンゴ礁をむしばむ病気の進行を遅らせていたとの研究結果が5日、発表された。

 豪ジェームズ・クック大学(James Cook University)の研究チームは、インド太平洋の広い地域で発生し、サンゴの体組織が壊死して剥がれ落ちる病気「ホワイト・シンドローム」と、キモガニと呼ばれる毛に覆われたカニとの関係を研究した。

 豪クイーンズランド大学(University of Queensland)のジョゼフ・ポロック(Joseph Pollock)氏がAFPに語ったところによると、キモガニはサンゴから剥がれ落ちた組織を食べたり、既に死んだ組織や死にかけた組織を餌に繁殖する微生物を食べたりすることによって、病気の進行速度を約3分の1まで遅らせていることが分かった。

 ポロック氏によると、ホワイト・シンドロームの原因は分かっていないが、海水温の上昇と関連して発生することが多い。これにかかると、数十年かけて幅2~3メートルに成長したサンゴ群体は数か月で死滅するという。

 ポロック氏らは豪ケアンズ(Cairns)の北240キロメートルにあるリザード島(Lizard Island)で、サンゴの健康な群体と病気の群体を採集し、キモガニと一緒の水槽に入れて3週間にわたり観察した。

 結果、キモガニはホワイト・シンドロームにむしばまれた群体に強く引き付けられることが分かった。これは、病気に感染したサンゴには近くの群体からカニが移り住み、病気の進行を遅らせることを意味するという。ポロック氏は「とても興味深いフィードバック・メカニズムだ」と話している。(c)AFP