【1月8日 AFP】太平洋の熱帯域に5年程度に1度、異常気象をもたらすエルニーニョ現象の頻度や変動と、近年の気候変動は関連性がなさそうだとする研究結果を3日、米国のチームが発表した。

 このチームには、太平洋の熱帯にある二つの島で見つかった古代サンゴの化石群について、当時のサンゴの月間成長を計測し、気候温暖化が気象に影響を与えていたかどうかについて検証を行っている科学者たちが参加している。

 今回の研究では数千年間の気温と降水量を再現し、これをエルニーニョの頻度や強度と比較した結果、20世紀に入って以降のエルニーニョのほうがより強力で、より頻繁に起きていることが分かった。

 しかし、この増加は統計的に有意で、気候変動と関連している可能性はあるものの、サンゴの化石群が示す長期的な記録から研究チームは、過去数百年のエルニーニョ・南方振動(El Nino Southern OscillationENSO)にも、大きな自然変動が存在したという結論に至った。従って最近数十年にみられている変化が、海面上昇と二酸化炭素排出に起因する気候変動と関連したものかどうかは定かでないという。

 論文著者の1人、米ジョージア工科大学(Georgia Institute of Technology)地球・大気科学部の気候学者、キム・コブ(Kim Cobb)教授は「20世紀にわれわれが目にしたENSOの変動レベルは化石サンゴ研究の示す基本値よりも高いという点で統計的に突出してはいるが、前例のないものではない」と述べている。

 この研究は全米科学財団(National Science FoundationNSF)が後援したもので、米科学誌サイエンス(Science)に発表された。米スクリップス海洋研究所(Scripps Institution of Oceanography)とミネソタ大学(University of Minnesota)の研究者も参加している。

 エルニーニョは2~7年の間隔で、熱帯太平洋の海面を循環している貿易風が弱まり始めた時に発生する。西太平洋で温まった大量の海水が太平洋東部になだれ込んで降雨パターンの大変動を引き起こし、通常は乾燥している地域に洪水や地すべりを発生させる。通常、エルニーニョの翌年には海面水温が低下するラニーニャ現象が起きる。(c)AFP