【12月21日 AFP】並外れて大きいあごの筋肉によって、ブラック・ピラニアは自分の体重の30倍にも相当する力でかみつくことができ、自然界にはこの「咬合(こうごう)力」にかなう者はいないとする研究結果が20日、英科学誌ネイチャー(Nature)系列のオンライン科学誌「サイエンティフィック・リポーツ(Scientific Reports)」に発表された。

 ホホジロザメやハイエナ、アリゲーターなどは、もっと大きな力でかみつくことができるが、体の大きさや体重との比較で考慮した場合、咬合力の強烈さはピラニアにずっと劣る。

■Tレックスもしのぐ「かみつき力」

 それどころか体格との比較でみると、ピラニアの咬合力は大型肉食恐竜のティラノサウルス・レックス(Tyrannosaurus rex、T・レックス)や、ホホジロザメの祖先にあたりクジラを餌にしていたメガロドンをもしのぐと同研究は述べている。

 米、エジプト、ブラジルの共同チームはブラジルのアマゾン川流域の湿原で捕えた体長約20~37センチのブラック・ピラニア15匹を用い、のこぎり状の歯の間に特別な計測器を挟み、それを指で触って挑発し、ピラニアの咬合力を測った。ピラニアは「直ちに自分の身を防御する際のさまざまな噛み付き方をしてみせた」という。

 計測された咬合力は320ニュートン(1ニュートンは、質量1キログラムの物体に1メートル毎秒毎秒の加速度を生じさせる力)で、体格差を考慮して換算すると、ピラニアの咬合力はアリゲーターの3倍近く強力だった。

■秘密は顎の筋肉にあり

 小さな魚がなぜ、これほどの力でかみつくことができるのだろうか。研究チームによると、ブラック・ピラニアの顎の筋肉は「並外れて」大きい上、顎関節を閉じる時の動きが非常によく調整されている。顎周りの筋肉の複合体は全体重の2%以上を占めるという。

 研究チームはまた収集したデータを用い、すでに絶滅したメガピラニア・パラネンシスの咬合力は1240~4749ニュートン程度だったと推算した。中新世に生息したメガピラニア・パラネンシスは500万年ほど前に姿を消したが、大きさは体長70センチ、体重10キロ程度だったと考えられる。またチームの分析の結果、メガピラニア・パラネンシスの咬合力は体重400キロを超えるホホジロザメにも匹敵したと推測される。

 メガピラニア・パラネンシスの食行動については解明されていないがカメや、厚いウロコで体が覆われているヨロイナマズ、さらに大きな陸生動物さえも砕いて食べることができただろうという。

 今回の研究結果は現在生息しているピラニアと絶滅したピラニアのどう猛な捕食動物としての評価を実証するものだとチームは述べている。(c)AFP