【11月28日 AFP】海面上昇が、国連(UN)の「気候変動に関する政府間パネル(Intergovernmental Panel on Climate ChangeIPCC)」が2007年に出した最新の予測よりも60%速いペースで進んでいるとの研究論文が、27日の英学術誌「Environmental Research Letters」に発表された。

 論文によると現在、海面は1年あたり3.2ミリメートルの速度で上昇している。一方、IPCCの2007年の報告書は2ミリメートルと予測していた。論文の数値は、21世紀末までに海面が約1メートル上昇するという広く共有された見解とも一致しているという。

 研究を発表したのは、独ポツダム気候影響研究所(Potsdam Institute for Climate Impact Research)のステファン・ラームストーフ(Stefan Rahmstorf)氏ら。過去数十年の海面水位のデータを分析し、IPCCが2007年の第4次評価報告書(Fourth Assessment Report)に用いたコンピューターシミュレーションと照合した。

 論文の共同執筆者、米企業テンポ・アナリティクス(Tempo Analytics)のグラント・フォスター(Grant Foster)氏は、AFPの取材に「バングラデシュのように大勢の人々が海抜1メートルの地域に暮らしている低地では、生活の基盤となっている土地が消失するということを意味している。数億人の気候難民が生まれ、資源戦争や様々な紛争の原因となりかねない」と語った。「ニューヨーク(New York)のような沿岸部の大都市にとっての最大の影響は、ハリケーンサンディ(Sandy)のようなものになるだろう」

 フォスター氏によると、予測を上回る海面上昇の原因は、地上の氷の融解などの可能性があるという。これは2007年当時にはあまり知られていなかった要因で、現在も不透明なままだ。他の要因としては技術的な不確実性などが挙げられた。

 IPCCの予測は1993~2003年までの情報に基づいたものだったが、その後はデータも増え、海面の水位を測定する人工衛星レーダーの精度も証明された。

 IPCCの第5次評価報告書は2013年9月、2014年3月、2014年4月に、3部に分けて発表される予定となっている。(c)AFP