【10月25日 AFP】英政府は23日、牛結核を媒介するとされるアナグマ3000匹の駆除計画の実施を延期すると発表した。駆除計画をめぐっては同国内で大きな抗議運動が起きている。

 オーウェン・パターソン(Owen Paterson)環境相は、年内に予定されていた試験的な駆除計画2件について、英全国農業者連盟(National Farmers UnionNFU)が予定通りの実施は難しいとの見解を出したことを受け、計画を2013年半ばへ延期すると述べた。

 駆除計画への批判は野生生物の専門家の間で高まっていた。また、ロックバンド「クイーン(Queen)」のギタリスト、ブライアン・メイ(Brian May)さんが呼び掛けた抗議行動も大きな注目を集めた。

 パターソン環境相は延期の理由について、夏季の悪天候や法的手続きの遅延に加え、ロンドン五輪の終了後まで実施を待つよう警察当局から要請があったことにより、年内実施のめどが立たなくなったためと説明している。

 NFUによると、駆除が行われる予定の地域ではアナグマの数が増加を続けており、牛結核の拡大を抑えるために必要な70%の駆除が難しい規模に達している恐れがある。

 農業関係者らは、結核菌を媒介するアナグマの駆除は、畜牛の間で広がる感染を止めるために欠かせないと主張している。牛結核が酪農家と政府にもたらす損害額は年間数百万ポンド(数億円)に上るという。政府統計では、2012年1月~6月に牛結核の感染により殺処分された畜牛は1万8213頭に上った。

 英王立動物虐待防止協会(Royal Society for the Prevention of Cruelty to Animals)は政府に対し、駆除ではなくアナグマへのワクチン注射を実施すべきだと訴えている。他方、一部の動物保護活動家は、駆除を直接妨害することも辞さないと語気を強めている。(c)AFP