【7月12日 AFP】世界の海洋学者ら2600人余りが集まる国際サンゴ礁シンポジウム(International Coral Reef SymposiumICRS)」が9日、オーストラリアのケアンズ(Cairns)で開かれ、参加者たちは世界各地での急速なサンゴ礁の減少に警鐘を鳴らした。また、気候変動に対する世界規模での迅速な取り組みを求めるとともに、サンゴ礁の減少は数百万人の生活を危機にもさらすと訴えた。

 サンゴ礁は世界の沿岸部に暮らす多くの人々に食料や職をもたらし、サンゴ礁観光を通じて多額の収益を生んでいる。さらに高波や暴風時に自然の防波堤の役割も果たす。今回のシンポジウムでは、海水温上昇、海洋の酸性化、乱獲、陸地からの汚染などによるサンゴ礁破壊を防ぐ対策を求める声明が採択された。

 米スミソニアン協会(Smithsonian Institution)のシニア・サイエンティスト、ジェレミー・ジャクソン(Jeremy Jackson)氏によれば、世界各地でこの数十年間、サンゴ礁が激減しているという。

 例えばカリブ海では、過去35年間で75~85%のサンゴが失われている。サンゴ礁生態系の保護が最も進んでいるオーストラリアのグレートバリアリーフ(Great Barrier Reef)でさえ、この50年間でサンゴが半減した。

 またインドネシア、マレーシア、パプアニューギニア、フィリピン、ソロモン諸島、東ティモールにまたがる広い海域は「コーラル・トライアングル(Coral Triangle、サンゴ礁三角地帯)」と呼ばれ、世界のサンゴ礁の3割が集中し3000種を超える魚類が生息するが、ここでもサンゴ礁の85%以上が沿岸開発や汚染など人間の活動によって危機的な状態にあるという。

 国際サンゴ礁学会(International Society for Reef StudiesISRS)のロバート・リッチモンド(Robert Richmond)会長はシンポジウムで採択した声明について、山積する問題を文書化しただけではなく、現時点で最も有効な科学を各国の指導者たちに提示することが目的だと強調した。

 4年ごとに開かれる同シンポジウムには、80か国から約2000人の海洋専門家らが参加する。(c)AFP