【6月8日 AFP】気候変動や人口増加、環境破壊によって地球の生態系は今後わずか数世代で崩壊すると警告する報告が、6日の英科学誌ネイチャー(Nature)に発表された。警告は、地球環境の破壊は数世紀をかけて徐々に進むとした科学界の主流見解とは、真っ向から対立するものだ。

   生物学、環境学、地質学、古生物学の第一線の研究者22人による報告は、気候変動と人口増加、さらに環境破壊が相まって 、生物圏が不可逆な状態にまで変化し、人類に大きな打撃を与えることになる「転換点」が今世紀中にも訪れる可能性があると警告する。

■急変が起きやすい現在の地球

 ネイチャー誌に報告を発表した研究チームは、過去に気候変動が起きた際の生物学的影響と、現在起きている事態を比較した。地球上では過去5回、種の大量絶滅が起きている。現在から4億4300年前、3億5900万年前、2億5100万年前、2億年前、6500年前だ。この5回と、1万4000~1万1000年前の氷河期末期を研究対象とした。

 研究チームは、小規模な生態系のうち50~90%で変化が起これば、地球上の生態系全体が種の絶滅などで特徴づけられる新たな状態に突入すると述べている。そしてひとたびこの「転換」が起きれば、これを元に戻すことは不可能だという。

 だが現在の地球は、生態系同士の連結性が増していることや、飽くことを知らない資源利用、かつてない温暖化ガスの急増などにより、急速に変化しやすい状態にあると、チームは指摘する。

 こうした変化を引き起こす要素には、今世紀半ばまでに現在の70億人から93億人前後に達すると見込まれる人口増加や、気温上昇を2度未満に抑えるという国連目標を上回る地球温暖化などが挙げられる。

■「転換点」に達すれば地球は別世界に

 同報告によれば、現在の人口を維持するためだけでも、不凍の陸地の約43%を農地や居住地に使用する必要がある。だが現在の傾向のままでは、この割合は2025年までに50%に達し、憂うべき「転換点」にほぼ近づくと科学者たちは警戒している。

 もし「転換点」に達すれば、米や小麦、トウモロコシなど必須穀物を栽培する穀倉地帯の生産能力は落ち、世界の食糧供給は壊滅的な打撃を受けるという。

 「その時点で、生物学的には全く新たな世界になるだろう」と、米カリフォルニア大学バークレー校(University of California at Berkeley)のアンソニー・バーノスキー(Anthony Barnosky)教授(統合生物学)は予測する。「われわれのデータは、生物多様性の大幅な減少を示唆している。例えば漁業や農業、林産物や清浄水など、生活の質を維持するためにわれわれが依存する多くのものが、深刻な打撃を受けるだろう。これが、わずか2~3世代のうちに起こるかもしれないのだ」

 だが報告は同時に、持続不可能な成長パターンを止め、資源の消耗を阻止するなど、この「転換点」を回避する方法は多々あるとも指摘している。

 報告は、ブラジル・リオデジャネイロ(Rio de Janeiro)で20~22日に開催される「国連持続可能な開発会議(リオ+20)」に先立ち発表された。(c)AFP