【5月9日 RenewableEnergyWorld.com】最近発表された2つの報告書によると、2011年の世界の風力タービン市場は大幅に発電容量を増やしたばかりでなく、新記録も達成した。

 前編で紹介したように新興諸国の風力発電産業が大きく成長する一方で、主要工業国では経済危機の影響などから当初計画に比べて停滞するケースがみられる。

■米国

 2011年に新規導入された風力発電の設備容量で、中国に次いで2位につけるのはまたしても米国だ。680万キロワット分を新規導入して、風力発電の総発電容量は、世界風力エネルギー会議(Global Wind Energy CouncilGWEC)調べで4690万キロワットに達した。米国風力協会(American Wind Energy AssociationAWEA)のデニース・ボード(Denise Bode)CEOは、米国の風力エネルギー産業の「長期的なファンダメンタルズは強固だ」と述べている。

 しかし、世界風力エネルギー協会(World Wind Energy AssociationWWEA)は、同産業の短期的な見通しは「あまり明るいとはいえない」としている。予算削減、政治的停滞、再生エネルギー補助金への世論の強力な反発に加え、11月の大統領選の結果次第では大幅な政策変更もあり得ることも相まって、投資家にとって先行き不透明な状況を生んでいる。さらに2月半ばには、その将来に多くの疑問が投げかけられていた再生可能電力生産税控除(Renewable Electricity Production Tax CreditPTC、条件を満たした再生可能エネルギーで発電した電力を不特定多数の者に販売した企業向けの税控除)の更新が成立せず、同控除は期限切れを迎えようとしている。

 2012年末までに完了する再生可能電力関連プロジェクトはPTCの対象になるため、年内は風力発電関連も建設ラッシュとなっている。しかし完成が2013年以降にずれ込むプロジェクトにはPTCは適用されない。11月の大統領選後に再生可能エネルギーの税控除が浮上するとしても、現在計画中の風力関連のプロジェクトに遅れが出るだろう。

■カナダ

 カナダの風力発電セクターの成長は目覚しく、2011年には130万キロワット分(WWEA調べ)の発電容量が新規導入され、同国の風力発電の総発電容量は500万キロワットを超えた(GWEC調べ)。カナダでの成長を主に牽引しているのは、オンタリオ(Ontario)州の「グリーン・エネルギー法(Green Energy Act)」だ。同法は州内の労働力と設備を一定の水準以上使うことを条件に再生可能エネルギー電力の固定価格買い取り制度(Feed-In-TariffFIT)を導入し、州内の風力発電産業の活性化を促している。

■ドイツ

 2011年に200万キロワット(WWEA調べ)の設備容量を新規導入したドイツは、依然として欧州連合(EU)加盟国中最大の総発電容量(2930万キロワット)を有している。

しかし、いくつかの問題もある。ドイツ沖の北海(North Sea)とバルト海(Baltic Sea)沿岸で送電線を敷設しているオランダの国営送電線事業者テネット(TenneT)の作業が遅れているため、ドイツ電力大手エーオン(E.ON)とRWEは3月上旬、複数の大型風力発電所プロジェクトがさらに大きく遅れるとの見通しを発表した。RWEではすでに、ドイツが掲げている沖合風力タービン1万基を設置し、2030年までに2500万キロワットを発電するという目標が達成できる見込みは「まったくない」としている。

■その他欧州

 欧州風力エネルギー協会(European Wind Energy AssociationEWEA)の政策責任者、ジャスティン・ウィルクス(Justin Wilkes)氏は、「欧州の経済危機にもかかわらず、風力発電産業は依然、堅調なレベルで新設備を導入している」と話す。スペイン、フランス、イタリアで2011年に新たに導入された風力発電容量はそれぞれ約100万キロワットだった。

 しかし、いくつかの欧州諸国の風力発電市場は停滞、あるいは縮小している。EWEAによれば、2000年にはデンマーク、ドイツ、スペインで合わせて欧州全体の風力発電設備新規導入の85%を占めていたが、2011年には同じ3か国の割合は34%になった。

 WWEAのステファン・ゼンガー(Stefan Gsänger)事務局長は「(欧州の風力発電の)市場全体としては回復しているが、いくつかの工業国で先行きが見通せないことや、市場の伸びが鈍化していることは大きな懸念材料だ」と述べている。

 スペインは債務危機への対応策の一環として最近、再生可能エネルギー事業への助成金を打ち切る決定を下した。一方、ドイツおよび英国の風力発電事業デベロッパーは、両国で太陽発電に関するFITが大幅に縮小されたことから、次に大幅な削減対象となるのは自分たちだと恐れている。

 しかしEWEAは、成熟市場での新規導入の落ち込みは、新たなドイツやスウェーデンの陸上風力発電、英国の沖合風力発電、さらに台頭しつつある東欧諸国の陸上風力発電で十分カバーされるとの見方を明らかにしている。(c)RenewableEnergyWorld.com/Tildy Bayar/AFPBB News

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再生エネルギー専門サイトRenewableEnergyWorld.comにこの記事の原文(英語)が掲載されています。