【3月2日 AFP】言語や数学、天文学の分野で優れていたことで知られるマヤ文明の滅亡は、比較的軽度の干ばつが原因だった可能性があるという研究結果が1日、米科学誌サイエンス(Science)で発表された。同様の干ばつは、気候変動により今後起こることが予想されているという。

 研究者らは、長らくマヤ文明は大規模な干ばつで滅亡したと考えてきた。だが メキシコのユカタン科学研究センター(Yucatan Center for Scientific Research)と英サウサンプトン大(University of Southampton)の研究者らは、この干ばつで年間降水量は25%~40%減少したのみと分析した。

 降水量が減ると、水源となる貯水池や湖の水が、降雨で補充されるより速く蒸発してしまう。共同研究者のサウサンプトン大のエールコ・ローリング(Eelco Rohling)教授は、データは夏の嵐が少なかったことが、降水量が減った主な原因だった可能性を示していると述べた。

■軽度の干ばつでも深刻な水不足に

 今回の研究は、石筍(せきじゅん、鍾乳洞で滴下した水の含有物が堆積してできた石灰質の突起物)や浅い湖から得た過去の降雨量の変化のデータを基にしたモデルを使い、マヤ文明が衰亡したとされる紀元後800~950年における降水量の減少量を正確に測ろうとする初の試み。

 分析の結果、河川がなく雨水に依存していた地域では、軽度の干ばつでも厳しい水不足に陥った可能性があったことが分かった。ローリング教授は、ユカタン半島(Yucatan Peninsula)の低地には河川がなく、夏は主な耕作期であるとともに、水源の水が補充される主な季節でもあったと説明した。

 同教授は「何年も続く干ばつが繰り返されたとみられることから、これが主な原因となって深刻な水不足に陥り、社会的混乱と都市の放棄につながったのだろう」と言う。

 専門家の間では、気候変動がユカタン半島で起きたのと似た干ばつをもたらす可能性があると指摘されている。論文の主著者、ユカタン科学研究センターのマルティン・メディナエリサルデ(Martin Medina-Elizalde)氏は、現代社会は当時より干ばつに強いと考えられるものの、リスクはゼロではないと警鐘を鳴らす。

 同氏は「軽い水不足と思える事態が、長期にわたる大規模な問題に発展する可能性もある。これはユカタン半島だけの問題ではなく、ユカタン半島と似た自然条件の、水の蒸発量が多い他の地域でも起こり得る」としている。(c)AFP