【1月17日 AFP】二酸化炭素(CO2)の排出量が増えると海の魚たちの脳と中枢神経系が侵され、魚の生存が脅かされる危険性があるとする論文が、16日の英科学誌「ネイチャー・クライメートチェンジ(Nature Climate Change)」に発表された。今世紀末までに予想される海水中のCO2濃度は、魚の聴覚と嗅覚、および捕食者から逃げる能力を妨げる恐れがあるという。

 オーストラリア研究会議(ARC)サンゴ礁研究チーム(Centre of Excellence for Coral Reef Studies)は、数年間にわたって、CO2濃度が高い海水中のクマノミとスズメダイの幼魚およびこれらを捕食する魚の行動を調べた。その結果、高濃度のCO2の影響は捕食魚にも多少見られたものの、幼魚への影響の方がはるかに大きいことが分かった。

 初期の研究で、海水中のCO2濃度が高いと幼魚の嗅覚が損なわれることが明らかになった。このことは、住みかでもあるサンゴ礁の場所の特定や捕食魚の臭いの察知が困難になることを意味している。

 次に、幼魚の聴覚も支障を来たしていることが分かった。聴覚は、昼間にサンゴ礁を離れ、夜になってサンゴ礁へ戻るために重要だ。だが、幼魚たちは混乱し、昼間にもサンゴ礁に寄り付いていた。このことは、昼間にサンゴ礁をうろつく捕食魚たちの格好の餌食になってしまうことを意味する。

 さらに群泳行動に不可欠な、幼魚に生まれつき備わっている方向転換の能力が失われる傾向にあることも分かった。

「以上の結果から、高濃度のCO2は魚の個々の感覚を損なうというよりは、中枢神経系そのものを破壊する可能性があるとの結論に達した」と、論文は述べている。

 実験に参加した研究者によると、世界の海には年間約23億トンのCO2が溶け込んでおり、海の化学的な環境にさまざまな変化をもたらしているという。(c)AFP