【8月23日 AFP】人口増加と水資源問題で地球が食料と環境の危機に向かっており、唯一の解決策は農業技術の向上と生態系のより賢明な活用しかないとの報告書を、国連(UN)が22日、スウェーデンのストックホルム(Stockholm)で開幕した水問題の国際会議「世界水週間(World Water Week)」で発表した。

 35ページに及ぶ同報告書「An Ecosystem Services Approach to Water and Food Security(水と食料の安全保障への生態系サービス・アプローチ)」は、国連環境計画(United Nations Environment ProgrammeUNEP)と国際水管理研究所(International Water Management InstituteIWMI)がまとめたもの。複数の査読論文の推計値をもとに見通しを示した。

 世界の人口は2011年の70億人から、2050年には最低でも90億人に達すると見られているが、水の需要は多くの国で現在すでに限界に近く、地球温暖化によりますます悪化する見通しだ。

 中国北部やインドのパンジャブ(Punjab)地方、米国西部などの食料生産の過密地域では、すでに水資源は「限界に達した、または限界を突破」している。さらに気候変動が、降雨パターンや降雨量を変え、水資源不足に拍車をかけることになる。アフリカ大陸だけで、21世紀末には農業生産が15~30%減少する可能性があるという。

 報告書は、現在の農業技術は常に高い収穫量と広大な土地利用に重点をおいているため、このままでは悲惨な結果につながると指摘。収穫量を高める技術革新で、食料不足と環境破壊をともに止めることを呼びかけた。

 対策として、降雨量が少なかったり不安定だったりする地域に適した作物を選び、水資源の利用効率を向上させるかんがい技術の導入を提案。また、暑い国々では、降雨のない時季の農家を救うための貯水池が不可欠だと述べ、また、農地周囲への植林は、水の流出を防ぐとともに土壌の湿気を保つことに役立つだけでなく、動物たちの生息する点在した小さな森林を結びつける効果もあるとした。

 報告書は、生態系を総合的に管理するよりよいガバナンス、いいかえると、政府と農家、都市生活者、専門家が1つになって、環境で必要な水量のバランスを取ることが重要だと述べた。

 そのためにも、自然資源の価値を金額に換算することで、農家と消費者たちが自然保護の必要性をよりよく理解することができるようになると提案。世界の湿地帯の経済価値を700億ドル(約5兆4000億円)と見積もり、そのうち52億5000万ドル(約4000億円)がアフリカにあり、371億ドル(約2兆8000億円)がアジアにあると換算した。(c)AFP