【6月20日 AFP】国連(UN)の京都議定書(Kyoto Protocol)では、温暖化対策として植林が推奨されているが、耕作地や耕作限界地を森に変えても今世紀中の温暖化防止には全くと言っていいほど貢献しないという論文が19日、英科学誌「ネイチャージオサイエンス(Nature Geoscience)」電子版に発表された。

 カナダ・ビクトリア大(University of Victoria)のビベク・ アロラ(Vivek Arora)氏とカナダのセント・フランシス・ザビエル大(St. Francis Xavier University)のアルバロ・モンテネグロ(Alvaro Montenegro)氏は、2011年から2060年までの50年間に行われる植林について5つのシナリオを想定し、モデリングした。この時、地球の平均気温が2100年までに1850年に比べて3度程度上昇したと仮定して陸、海、大気への影響をシミュレーションしたカナダ独自の研究「CanESM1」を活用した。

■今世紀中の気温低下にほぼ効果なし

 その結果、地球上の耕作地すべてに植林しても、2081~2100年の間に平均気温はわずか0.45度しか下がらないことが分かった。耕作地の半分に植林した場合の気温低下は0.25度程度だった。いずれのシナリオも、もちろん、食料確保の観点からは非現実的だ。耕作地の半分に植林する場合、人類の食を満たすために単位面積当たりの収量を少なくとも倍増させる必要がある。

 残りの3つのシナリオについては、温暖化防止において、熱帯地方の植林が温帯地域や高緯度地帯の植林より3倍も効率的であることが分かった。

■成熟にかかる時間がネック

 植林が温暖化防止に貢献しない理由としては、森林の成熟には数十年程度かかること、二酸化炭素(CO2)が大気中に数世紀にわたり残存できる分子であることなどが挙げられる。

 また、森が温室効果ガスを吸収する一方で、耕作地よりも色が濃い分、耕作地より余計に太陽熱を吸収していることも理由として考えられる。

 以上の結果から、植林計画においては熱帯地方の植林を重点的に行う一方で、世界の温室効果ガス排出の10~20%を占める森林伐採を食い止める努力がなされるべきだと論文は述べている。(c)AFP