【5月22日 AFP】人間の影響により生息地が破壊されるなどして動植物種が絶滅するペースは、これまで考えられてきたよりも2倍ほどゆっくりだったとの論文が、18日の英科学誌ネイチャー(Nature)に掲載された。

 地球上の生物種の数は、森林伐採や気候変動、乱開発、河川や海への化学物質の流出などにより、減少を続けている。

 だが、2005年の国連(UN)のミレニアム生態系評価(Millennium Ecosystem Assessment)や、2007年の同「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」で報告された絶滅種は「根本的に欠陥がある」手法で計算されたもので、さらには、絶滅の危険性のある動植物を掲載した国際自然保護連合(International Union for the Conservation of NatureIUCN)の「レッドリスト」も見直しが必要だという。

 論文を共同執筆した米カリフォルニア大学ロサンゼルス校(University of California at Los AngelesUCLA)の環境学、進化生物学専門家のスティーブン・ハブル(Stephen Hubbell)氏は、「科学的な証拠と実験データに基づいて、これまでの推測値はおよそ2.5分の1になると考えている」と述べた。

 ハブル氏は「(この結果は)種を救うための時間が想定よりもできたということだから、歓迎すべきニュースだ。だが、一方で、これまで誤って行われた無数の調査をやり直さなければならない、という意味では歓迎できないニュースだ」と述べた。

■「推定方法に誤り」と指摘

 科学者たちは、地球の過去の歴史と比べて、現代ではその100~1000倍のスピードで動植物種が減少していると報告してきた。また、国連報告書は、今後数世紀で、この速度はさらに10倍加速するだろうと警告していた。

 なぜ科学はこれほど長期にわたって、間違いをし続けてきたのだろうか。

 その理由は、絶滅の速度を直接計測することが難しいところにある。代わりに科学者たちは、間接的な手法である「種数面積関係」を用いてきた。この手法は、ある面積に生息する種数を数えて、生息面積が拡大した際に種数がどのように増加するかを計測するものだが、ある生息地が破壊されたときにどれだけの種数が残るかを調べるとき、研究者らは、この数値を単純に逆転させて数えてきた。

 だが、論文共同執筆者の中国・広州(Guangzhou)中山大学(Sun Yat-Sen University)のFangliang He氏は、ある種に初めて遭遇するのに必要な面積と比べて、その種が絶滅するために破壊が必要な面積の方がはるかに大きいと指摘する。

 1980年代には、2000年までに地球上の半数の種が絶滅するとの恐ろしい予測もあった。「だが、実際にそれは起きなかった」と、ハブル氏は語る。

 しかし、科学者たちは手法に疑いの目を向けることをせずに、「絶滅の負債」というコンセプトを編み出した。この論理では、減少する種は、最後の個体が死滅するまでに数十年以上かかるとしても、絶滅する種とみなされるのだ。

 だが、「絶滅の負債」は、ほぼ確実に実際には存在しないという。

 ハブル氏は、他に誰も間違いに気づかなかったことに「ショッキングなことだ」と述べ、「多くの科学者たちが、問題を間違った方法で考えてしまうことで、正しい答えを導き出せない可能性があるということを示している」と指摘した。(c)AFP/Marlowe Hood