【11月21日 AFP】米食品メーカー、フリトレー(Frito-Lay)が、環境意識の高い消費者向けに満を持して市場に投入した初の「堆肥になる」ポテトチップの袋は、その袋のたてる音のあまりのうるささに米国の店頭から姿を消した。

 米動画共有サイト・ユーチューブ(YouTube)には、「死者をも起こす騒音」などというコメントとともに、この袋の騒音を伝えるために米国の消費者らが投稿した動画が何万点と並んでいる。

 しかし、開発に4年の歳月をかけた袋をゴミの山にするわけにはいかないと、フリトレーはカナダの消費者をターゲットにその利点をアピールする作戦に打って出た。

 カナダでは、「ユニークな音」「緑の奏でる新たな音」といった袋を称える店頭広告が並んでいる。

 さらに、フリトレーカナダのアンヌ=マリー・ルノー(Anne-Marie Renaud)副社長が自ら動画に出演し、「ハロー、カナダ!」と微笑みかけ、新しい袋の利点と欠点を秤にかけるよう消費者に求め、騒音にお悩みであれば無料で耳栓をお届けしますと呼びかけた。

■騒音レベルは「芝刈り機」並み

 この袋は、野菜由来の再生可能素材とトウモロコシ由来のポリ乳酸ポリマーを原料に作られており、分解までわずか14週間しかかからない。

 しかし、袋のたてる音はとても大きく、最大で90デシベルを超える音が出る。これはガソリン駆動の芝刈り機の騒音と同程度で、近くで赤ん坊が眠っていれば目を覚ますレベルだ。映画館でこの袋に入ったポテトチップを食べるのはとても無理だ。

 袋はことし10月、発売から18か月を経て、ついに米国の店頭から姿を消した。米SNSフェースブック(Facebook)でもひどく不評で、フリトレーのポテトチップ全体の売り上げも実にこの期間で11%も落ち込んだ。

■カナダでは支持じわり

 しかし、カナダでは、フリトレーは撤退を選ばずに、批判に正面から向き合うことを選択した。「それなりにうるさいのは事実です。しかしゴミを削減してカナダを美化し、環境を保護する機会なのです」と、ルノー副社長は語りかける。「環境保護の正しい方角に向かう一歩なのです」

 ケベック大学モントリール校(University of Quebec in Montreal)のブノワ・デュゲ(Benoit Duguay)教授は「短所を長所に変える非常に賢いマーケティングで、効果を上げている」と評価する。

 フリトレーの活動はカナダでは地元の環境保護団体などから一定の支援を得て、同社の製品「サンチップ」のカナダでの売り上げは好調を維持しているという。

 フリトレーは1年以内に音が小さい袋を実用化することを目指し、開発を進めている。(c)AFP/Geraldine Woessner