【11月11日 AFP】米カリフォルニア州沖のメキシコ湾(Gulf of Mexico)に生息するクジラを調査したところ、日焼けしたときに人間の皮膚にできる水ぶくれに似た症状が多くの個体にみられ、オゾン層の減少による紫外線の増加が原因ではないかと懸念されている。

 英ロンドン動物学会(Zoological Society of London)とロンドン大学(University of London)、さらにメキシコの海洋科学学際センター(CICIMAR)の生物学者らは2007~09年の3年間にわたり、1月から6月にかけてメキシコ湾で、シロナガスクジラやナガスクジラ、マッコウクジラなど約150頭を調査した。

 クジラは息継ぎをしに海面に現れるほか、海上でお互いにコミュニケーションをとったり、子どもにエサをやったりする。こうしたとき、クジラは直射日光に背中をさらした状態で、時にそれは数時間にも及ぶ。

 研究チームはクジラを高解像度カメラで撮影し観察したほか、ステンレス製の矢を使ってクジラの皮膚のサンプルを採取し、それを顕微鏡で検査した。すると人間が日焼けしたときにできる水ぶくれのような皮膚の損傷が広く確認され、時間が経過するとともに、おそらく紫外線に多量に浴びたせいで、悪化していった。日光への露出時間が長かったクジラほど症状はひどく、またほかのクジラよりも皮膚の色が薄いシロナガスクジラの状態がもっとも悪かった。

 メキシコ湾の紫外線レベルは年間を通じて「強い」から「極端に強い」の間を揺れ動いている。皮膚の損傷がクジラの健康に及ぼす影響は今回の研究に含まれていないが、英ロンドン動物学のローラ・マルティネス・ルバッサー(Laura Martinez-Levasseur)氏は「(こうした症状が)増加している原因はこの段階では明らかではないが、原因として考えうるのはオゾン層の減少や雲量の変化だ」と述べた。(c)AFP

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