【11月1日 AFP】名古屋で開かれていた国連(UN)の生物多様性条約(Convention on Biological Diversity)第10回締約国会議(COP10)は前月30日、2020年までの生態系保全の世界目標「愛知ターゲット」と、生物遺伝資源の利益配分を定めた「名古屋議定書」を採択して、閉幕した。

「愛知ターゲット」では、今後10年以内に生物多様性の損失を止めるために「効果的で早急な」行動を取ることをうたい、陸地の17%と海域の10%を保全すると定めた。また、参加193か国・地域が、汚染に歯止めをかける、森林や珊瑚礁を保護する、土地や水域を保全する、持続可能な漁業を推進するといった個別目標も盛り込まれた。

 一方「名古屋議定書(Access and Benefits Sharing Protocol)」では、医薬品や化粧品など遺伝資源を利用して作られた製品から得られる利益と知識を「公平に」配分するための20項目の戦略プランを定めた。

■「対立乗り越え合意」強調、気候変動会議の成功に期待

「名古屋におけるこの合意は、その気になればわれわれだって合意できるのだというメッセージだ」。欧州委員会(European Commission)のヤネス・ポトチュニク(Janez Potocnik)環境担当委員は、前年12月にデンマークのコペンハーゲン(Copenhagen)で開催された気候変動枠組み条約(UNFCCC)の第15回締約国会議(COP15)で先進国と途上国が激しく対立した問題を引き合いに出し、COP10の成果を強調した。

 コペンハーゲンで頓挫した温暖化対策は、今月29日にメキシコ・カンクン(Cancun)で開かれるCOP16で、2012年に期限切れとなる京都議定書を引き継ぐ温室効果ガスの排出削減目標について話し合う。しかし、削減目標や気候変動対策をめぐって先進国と途上国の間に横たわる溝は依然として大きい。

 COP15の失敗で、国連を舞台に地球環境問題の解決を目指すという枠組みに対する市民の信頼は大きく損なわれた。COP16にはこうした損害を回復する場としての期待がかかるが、前月中国で開かれた準備会合ではまたしても、先進国と途上国の対立が影を落とした。

 それだけに、今回COP10で両者が合意に達したことに希望を見いだす関係者は多い。2つの国連会議でともに途上国側の声を代表するブラジルのイザベラ・テイシェイラ(Izabella Teixeira)環境相も、「多国間交渉から良い結果を得られることを示せた。カンクンでも良い結果が出せると信じている」と述べた。

 NGOも、名古屋議定書の採択も一時は危ぶまれたことを指摘、名古屋での合意が温暖化問題での交渉に弾みを付けることへの期待を口々に寄せた。(c)AFP